東京高等裁判所 昭和30年(ネ)658号 判決
被控訴人等は、本件建物は国庫補助を受けて建築されたものであるが、その補助を受けるに当つては、戦災復興院の承認がなければ他に譲渡することはできないという附款があつたのに、本件建物の譲渡について、戦災復興院の承認がないから、右譲渡は無効である旨主張するので判断する。成立に争のない乙第九号証の一、第十七号証によると、次の事実を認めることができる。東京都貸家組合連合会が昭和二十一年度の国庫補助金の交付を受けて庶民向賃貸住宅を建築するについては、右補助金の交付を受ける条件として、「本補助を受けた住宅は、本補助を受けたものが、貸家又は貸間として経営するものとし、戦災復興院の承認なくして、他に譲渡その他の処分をなすことを得ない。譲渡する場合でも、三、四及び五号の事項(三号は右記載の本文、四号は入居者選定について都長官の指示を受けること、五号は家賃間代に関する定めである。)は譲受人をして遵守せしめること」と定められ、その旨昭和二十一年十一月八日附書面で東京都建設局長から東京都貸家組合連合会長に通達された。ところが控訴人が本件建物の譲渡を受けるに当つては、戦災復興院の承認を受けなかつたものである。
そこで、右のような承認を受けないでなされた譲渡行為の私法上の行為について考えてみる。上記建設局長の通達(乙第九号証の一)によつて認められる昭和二十一年度の国庫補助金交付の条件として示されている諸条項に照して判断すると、右通達の趣旨とするところは、国庫補助金の交付を受けたものに対しては、事業計画に基き庶民住宅を誠実に建築させ、終戦後の住宅難緩和のため引揚者や戦災者等に低廉な賃料でこれを賃貸させようとし、このことを実効あらしめるために、国庫補助による建築住宅の譲渡その他の処分行為を住宅所有者の恣意に放任しないで、監督官庁の承認を受けることとし、このようにして国庫補助事業の遂行に支障を生じないことを期したものであつて、戦災復興院の承認を受けないで譲渡その他の処分をした場合、その私法上の効力の発生までも右の承認にかからせる趣旨とは解せられない。してみると、控訴人が上記のとおり言問貸家組合から本件建物の譲渡を受けるに当り戦災復興院の承認を受けなかつたのであるが、このような譲渡も私法上は有効であつて、これにより控訴人は本件建物の所有権を有効に承継取得したものといわなければならないので、被控訴人等の右主張は採用できない。
(村松 伊藤 土肥原)