東京高等裁判所 昭和30年(ラ)131号 決定
抗告人の本名「兼継」の継の文字はなる程字劃は多いが、普通使用する場合「継」の略字でも通用するし、さして難解な読み難い字でもなく、また他の文字と間違い易いとも考えられない。抗告人提出の疏明書類によると、抗告人は別に「稔」なる通称名を使用していることは窺えないでもないが、永年に亘り本名同様に慣用してきた事跡も認められない。
元来戸籍法第百七条第二項において、正当な事由がなければ名を変更できないとしたのは、名は個人の同一性を識別するための呼称であつて、紊りにこれが変更を許すときは、個人の同一性が紛ぎらわしくなり公共の利益を害するに至るからである。
本件の場合右に認定した程度では到底右に所謂正当の事由に該当するとは謂い難いから、抗告人の本件申請は却下を免れず、これと同趣旨に出でた原審判は相当であつて、本件抗告を棄却すべきものとし、抗告費用は抗告人に負担せしめ主文のとおり決定する。