東京高等裁判所 昭和30年(ラ)432号 決定
よつて按ずるに、本件記録によると、相手方は昭和二十四年九月五日債務者武笠林吉に対して貸与した元金四万円及びこれに対する同年十一月九日から同年十二月八日までの年一割の割合による約定利息並びに同年十二月九日から昭和二十七年六月十六日まで日歩金二十銭の割合による遅延損害金債権の弁済を得るため、昭和二十七年六月十七日東京地方裁判所に抵当権の実行として、本件不動産競売の申立をなし、同裁判所は同年八月十三日競売手続開始決定をなし、公告その他の手続を経て、昭和三十年七月二十日近藤于根を最高価競買申出人と定め競落許可決定を言渡したところ、本件抵当不動産の第三取得者たる抗告人は、同月二十六日当裁判所に右競落許可決定に対する即時抗告の申立をなし、次いで同年八月二十七日抵当債権者たる相手方の代理人弁護士森岡三八に対して前掲の本件競売の申立債権たる元金四万円とこれに対する昭和二十四年十一月九日から昭和三十年八月二十七日までの利息並びに遅延損害金全部及び本件競売手続費用を附加した合計金二十二万五千円を代位弁済し、これにより本件競売の基本債権は消滅した事実を一応認めることができる。
ところで、競売法による不動産競売手続において、競落許可決定が言渡された後でも、該決定が確定し競落人が未だ競落代金を完納しない限り基本たる抵当債権が弁済によつて消滅したときは、利害関係人は右消滅を以て競落許可決定に対する適法なる抗告の事由とすることができるものと解するを相当とする。蓋し競売手続は基本債権の弁済を目的として遂行せられるものであるから、競落許可決定があつても競売手続究極の目的たる債権がその後弁済によつて消滅した以上、爾後競売手続は進行の目的を失い続行すべからざるものとなるからである。本件においては、競売の基本債権が既に消滅したこと前認定のとおりであり、競落人が未だ競落代金の支払を了していないことも本件記録上明かである。従つて本件競落は許されないものであるから、原競落許可決定は取消を免れない。