大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ラ)657号 決定

記録編綴の山梨県学校職員退職手当支給条例(昭和二十九年一月十四日公布同県条例第四号)第一条がその第二項において、「この条例は山梨県恩給条例(昭和二十八年四月山梨県条例第六号)の規定による給付、恩給法(大正十二年法律第四十八号)の規定による恩給、国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号)の規定による退職給付及びこの条例による退職手当を綜合する新たな退職給与制度が制定実施されるまでその効力をもつものとする。」と規定していること、同条例第三条の規定する退職手当が第四条第五条の規定する退職手当に比して少ないこと及び同条例第十条第十一条の規定するところを合せ考えると、同条例により支給せられる退職手当は退職により脅威を受くべき一時の生活資料に充つるため支給せられるものであつて、退職後のつつましい生活を維持する資料に充つるため支給せられる官吏の恩給にも比すべきものと解するを相当とする。したがつてこれを受くる権利は受給者の一身に専属し、他にこれを讓渡することを許さないものと解すべきであるから、これが差押又は仮差押をなすことは許されないこと論を俟たない。尤も右条例には退職手当についての讓渡又は差押を禁止する旨の規定は存しないが、これがため右解釈を左右することはできない。また右条例によれば、退職者が別に恩給を支給せられる場合も存し得るが、これ亦右解釈を左右する資料となすことはできない。しからば、抗告人が第三債務者山梨県に対し有する本件退職手当債権につき相手方身延高等学校P・T・Aがなした仮差押命令の申請は失当であること論を俟たないから、これを是認して右債権に対する仮差押に対しなした抗告人の異議申立を却下した原決定は失当たるを免れない。ところで取寄せにかかる甲府地方裁判所昭和三十年(ヨ)第七八号債権仮差押申請事件の記録によれば、相手方身延高等学校P・T・Aは抗告人に対する昭和三十年五月三十日及び同年七月三十一日附債務確認証書に基く金三十七万三千九百六十六円の債権を保全するため、抗告人が第三債務者山梨県に対し有する本件退職手当債権全額十七万四千九百円につき同年八月五日甲府地方裁判所に対し債権仮差押命令の申請をなし、同年八月八日これが仮差押の決定を受け、該決定は即日債務者たる抗告人及び第三債務者たる山梨県に各送達されて執行を了したことを窮い得るから、かかる仮差押に対する異議申立は民事訴訟法第七四四条所定の異議申立に該ると解するを相当とする。しからばこれに対しては終局判決を以て裁判すべきこと論を俟たないから、抗告審たる当裁判所としては自判の余地がない。

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