東京高等裁判所 昭和31年(う)1321号 判決
被告人 長郷義夫
〔抄 録〕
被告人の控訴趣旨のうち量刑不当の部分及び弁護人の控訴趣旨第二点(量刑不当)に対する判断
各所論にかんがみ記録を精査するに、被告人の本件犯行の手口、回数、被害金額及び被告人の前歴とくに累犯となる同種の前科のあることなどよりみて必ずしも被告人に対する原審の科刑が著しく重きに過ぎるものとはいわれないのであるが原審相被告人との刑の均衡の点において考察するに、両名の前科関係からみては(被告人は、島田に原判示前科二犯の外にもう一件懲役二年に処せられたことがあつてこの記録から落ちていて、前科及び最高刑は自分と同じであると主張するが、それは島田には原判示前科二犯の外に昭和二二年四月一四日浦和地方裁判所で窃盗罪により懲役二年に処せられた前科があつて、都合三犯となるが、同刑は後一年六月に減刑せられて執行を終り、本件犯行とは累犯関係にならないため原判決には示されてないのであつて、この記録から落ちているのではなく、また、原審が量刑の資料として見落してはいないと思われる)大したへだたりはないが、両者の犯行の期間、単独犯行件数、被害金額、賍品売却等によつて得た利得及び共犯関係における地位役割等諸般の情状をかれこれ考え合せると、両者の懲役刑期に適当な差をつけるのを相当と認められる。なお弁護人所論の換刑処分の点についても、その留置一日に相応する金銭的換算率は必ずしも自由な社会における勤労の報酬額と同率に決定されるべきものではないのであつて、罰金額の多寡によつてもその換算率の異る場合のあることはもとより当然のことであるから、右換算率は自由な社会における勤労の報酬額を標準とすべきことを主張し、原審が右両名につきその換算率に差をつけたことを非難する所論には賛同できない。しかしながら、所論刑事訴訟法第四九五条の未決勾留法定通算についての折算額が罰金等臨時措置法第七条第四項によつて一日金二〇円から金二〇〇円に引き上げられた趣旨にかんがみると、刑の執行に準ずべき罰金不完納の場合の労役場留置期間を定める金銭的換算率も、通常の場合において右にならうのが妥当と思料せられるので、本件においては原審の被告人に対する一日金一〇〇円の換算率は寡額に過ぎるものと認められる。しからば結局被告人に対する原審の刑の量定は不当ということができるので論旨はこの点において理由があつて原判決は破棄を免れない。
(中野 尾後貫 堀真)