大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)1554号 判決

被告人 吉野長太郎 外一名

〔抄 録〕

所論のうち法令適用の齟齬の点につき(控訴趣意書第三補充申立書)。

按ずるに原判決が、被告人両名にかかる原判示事実につき、被告吉野長太郎に対しては刑法第二五三条を、被告人星野武夫に対しては同法第六五条第一項第二五三条第六五条第二項第二五二条第一項を各適用し、同法第二四七条を適用していないこと判文上明かである。所論によれば、被告人両名にかかる原判示事実は刑法第二四七条の背任罪を構成するものとして同条を適用すべきものであると主張するのであるが、抑も業務上横領罪と背任罪とは委託任務に基くものであり、その信任に違背する点において本質を同じくするものであるけれども、前者は委託者の個々の財物を不法に領得するものであるのに反し、後者は委託者の右以外の財産状態を害する点において差異あるものと解すべきを相当とする。本件について観るに原判示事実たるや判文上も明らかなように、原判示第一、の(二)は、被告人吉野長太郎が判示太田部落民のため業務上保管の預金の内三十五万円を被告人星野武夫と共謀の上同被告人の用途に費消せしめる目的で払戻を受けて着服横領したと謂うのであり、原判示第二、の事実は、被告人星野武夫は被告人吉野長太郎が判示太田部落民のため業務上保管中であることの情を知悉しながら、同被告人と共謀の上擅に自己の用途に費消する目的のもとに同被告人をして右預金の内三十五万円の払戻をなさしめて着服横領したと謂うのであつて、太田部落民の財物(補償金――預金)を不法に領得したものであり、これに対して業務上横領罪としての刑法第二五三条を適用しているのは正にそのところであつて、背任罪についての刑法第二四七条を適用すべきものでないことは勿論である。所論は畢竟独自の見解に基くものであつて到底採用し難く、原判決には所論の如き違法はいささかも存しない。論旨はその理由がない。

(工藤 草間 渡辺好)

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