東京高等裁判所 昭和31年(う)1624号 判決
被告人 西田さだ
〔抄 録〕
女子少年者労働基準規則第八条第四四号
本件労働基準法第六三条第二項 違反の罪のうち満一八才に満たない少年をその福祉に有害な業務に従事せしめる場合その使用者が利益をうけていないということはさして斟酌すべき事情とは認められないことは右法条が所論の如く年少者保護の規定であつて、児童の精神、肉体双方の健全な、成長、育生を確保する為のものである点から考えても明瞭である。
又原判決は被告人は本件少年を雇入れたことにより万余の損害を蒙つている旨判示しているところ、成程被告人の原審公判供述によれば、所謂前借金三五、〇〇〇円の内六〇〇〇円返還されたのみで、その余は免除したというので、二九、〇〇〇円の損失を蒙つたが如くである。しかし、一方M子の司法警察員に対する供述によれば、同人が被告人方に雇われている期間中には合計約四四、〇〇〇円の稼高があつたことが認められるので、被告人の右損失を蒙つた旨の原審公判供述はたやすくは信用できないのである。而して被告人はM子が満一八才未満で、芸妓として酒席に侍せしめることのできないものであることを熟知し乍ら雇入れたもので、たとえ右少年の実母等から雇入方を懇願されたからとて遵法精神の欠如するものとの謗は免れない。
その他被告人の性行、経歴、境遇等諸般の事情を綜合すれば、原判決が被告人に対し罰金刑に対し刑の執行を猶予したのはいささか量刑軽きにすぎたものと認められ、論旨は理由がある。
(久礼田 武田 石井文)