東京高等裁判所 昭和31年(う)2249号 判決
被告人 佐藤二郎
〔抄 録〕
S弁護人の控訴趣意第二点並びに被告人の控訴趣意中公務執行妨害、傷害の点に関する論旨について。
然しながらおよそ多数人が互に意思を通じ一体となつて公務執行妨害の手段たる暴行に出でた場合においては、たとえ一部の者が直接実行の衝に当らなかつたとしても、その者は直接実行の衝に当つたものの行為を利用して共同の意思を実現したに外ならないから、右暴行につき公務執行妨害罪の共同正犯としての罪責を負わなければならないものであるところ原判決挙示の証拠によれば原判示第二の事実を優に認めることができると同時に、被告人は警官隊の職務の執行を阻止するためこれに暴行を加える意思をもつて海保洋司外数十名を叱咤激励し、これ等の者と相互に犯意を通じ共同してその所為に出でたものであり、中途逮捕されたためその後は直接右集団暴行の実行に加担する由がなかつたが逮捕により右共同の犯意を放棄したものではなく、他の者において被告人の逮捕後なお先に被告人の示嗾により形成された右共同犯行の意思を継続しこれが実行として、被告人逮捕前の暴行と包括一連の関係において集団暴行の所為を反覆したものであることを窺うに足り、右事実によれば被告人は前記説示の趣旨において他の者の実行行為を利用して右共同の犯意を実現したものに外ならないから、逮捕の前後に亘る右暴行(及びその結果たる傷害)の事実につき共同正犯としての罪責あるを免かれない。その他記録に徴しても原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認又は法令適用の誤は存しない。原審が原判示第二事実を認定して被告人を公務執行妨害、傷害の罪に問うたのは正当である。その罪責を否定する所論は採用し難く、論旨はすべて理由がない。
(三宅 河原 遠藤)