大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)2508号 判決

被告人 峯村甚造

〔抄 録〕

原判決の認定した被告人の賍物故買の事実は、原判決引用の証拠によりこれを認めるに足り、記録を精査検討し当審における事実取調の結果に徴しても、原判決の右事実の認定が所論のように誤認であるとは認められない。すなわち原判決引用の証拠によれば、原審相被告人久保田煕男、同中山芳雄はいずれも原判示森村外三ケ町村共有山組合(現沢山共有山組合)の組合会議員で、原判示沢山森林組合理事を兼ね、久保田熙男は右共有山組合の森林委員長、中山芳雄は共有山組合森林副委員長として右森林組合が右共有山組合から委託を受けた原判示森村外三ケ町村(現屋代町外一村)共有にかかる沢山、鏡台山、芝平地籍山林約五〇〇町歩の立木等の売却処分に関する業務に従事するとともに、右山林の手入、毎木調査等をなして現実に管理し占有していたものであるが、右両名は共謀の上同人等の遊興費等を捻出するため、その業務上占有にかかる鏡台山地籍(芳の沢)所有の山林立木唐松約四〇〇石を沢山森林組合所定の正規の売買手続を経ることなく擅に被告人に売却処分することを企て、昭和二九年九月下旬頃原判示森村役場において被告人にこれを正規の売買手続を経ないで代金四六〇、〇〇〇円で売却し、被告人はその情を知りながらこれを買い受けたものであることを認めることができるのであるから、久保田熙男、中山芳雄等が同人等の業務上占有する右山林立木唐松約四〇〇石を右のように不法に領得する意思を以て売却処分する意思を表現するにおいては、相手方である被告人がこれを買い受ける意思表示をするを俟たないで業務上横領罪は完成し、その横領物は賍物たる性質を具有するものであり、その情を知つてこれを買い受けた被告人の行為は賍物故買罪に該当するものといわねばならない。そして原審第五回公判調書中証人中条勇の供述記載、当審証人中条勇の尋問調書によれば、前記共有山林の立木の売却処分は毎年度初めに右共有山組合の組合会決議によつて年度内における売却予定山林が定められ、次いで個別的に各山林毎に右共有山組合の森林委員等が毎木調査等をなした後同委員等を含む沢山森林組合理事会の決議を経て右森林組合長理事が買受人との間に売買契約を締結し、その代金は同組合の金銭保管者において徴収していたものであり、久保田熙男、中山芳雄は右共有山組合の組合会議員、右森林組合の理事として、右各組合の決議に関与していたに止まり、同人等に右共有山林立木の売却処分の権限が委任されていたものでないことを認めることができる。久保田熙男、中山芳雄が所論のように森村外三ケ町村合併による中学校建設資金を捻出するためその権限に基いて鏡台山地籍(芳の沢)山林立木唐松約四〇〇石を売却したものと認めるべき証拠はなく、又被告人が右山林立木唐松約四〇〇石を買い受けた当時沢山森林組合から十数回に亘り前記共有山林立木を買い受けたことがあり、その代金も内金払が承認されていたとしても、これらの事由によつて被告人が、右久保田、中山等において同人等の遊興費を捻出するため擅に右唐松約四〇〇石を売却処分するものであることを知らなかつたものと認めることはできない。なお賍物故買罪の成立に要する故意は買い受くべき物が賍物であるかも知れないと思いながら、しかも敢てこれを買い受けるいわゆる未必的故意を以て足るものと解すべきであるから、所論のように原判決の引用する被告人の検察官に対する昭和三〇年一〇月二五日附供述調書によつては、被告人が右山林立木唐松約四〇〇石を買い受けるに際しこれが賍物であるかも知れないとの未必的故意を有していたことが認められるに過ぎないとしても、固よりかかる未必的故意の下に右山林立木を買い受けた被告人の行為は賍物故買罪に該当するものとするに妨げないのみならず、被告人の右検察官に対する供述調書と爾余の原判決引用の証拠を綜合すれば、被告人は右山林立木を買い受けるに際し、それが賍物であることを知つていたものと認めることができるのである。しからば原判決には所論のような事実の誤認又は法令適用の誤はなく、論旨はいずれも理由がない。

(加藤 吉田作 山岸)

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