大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)3003号 判決

被告人 荒木耐三

〔抄 録〕

弁護人控訴趣意中事実誤認の主張、法令適用の誤の主張について。

然し乍ら、本件記録を精査し、原判決を仔細に検討勘案するも原判示事実は、原判決挙示の証拠により優にこれを証明することができ、原判決にはいささかも事実誤認の違法その他法令適用の誤は存しない。所論によれば、原判決挙示の証拠中、被害者に対する医師の鑑定書中本屍の死因についてとあるところによれば、本屍の死因は左右肺気管支炎に因るものである。後気管支肺炎は比較的軽症にして健康人ではこれによつて死亡するに至らないが本屍に於ては高度の全身衰弱に陥つているので容易に死亡したものと推定される。なお本屍の高度全身衰弱は脳機能障碍に因つて又肺炎は脳機能障碍に続結する嚥下障碍或は肺循環障碍による血液就下に因つて惹起されたものと推定される。とあつて其の鑑定によると孰れも推定であつて断定ではない。然るに此の推定の事実ある死因を採用して本件を同時傷害致死と認定した事は事実の誤認である旨主張するのである。ところで所論指摘の鑑定人の鑑定の結果が断定に非ずして推定であること洵に所論のとおりであるが、鑑定人の鑑定たるや、当該裁判官の事実認定の補助的作用をなすに止まり、これと他の諸種の証拠を綜合して鑑定人の鑑定の結果たる推定の事実を認定することは固より妨げなきところであつて、原判決がなした判示死因の認定にはいささかも事実誤認の違法は存しない。

(工藤 草間 渡辺好)

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