大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)458号 判決

被告人 許洙鉄

〔抄 録〕

論旨第一点について。

所論は、「刑法第二三八条は、窃盗犯人がみずから自己の逮捕を免れるため暴行又は脅迫を行つた場合に限つて適用されるものであるから、被告人が自分自身の逮捕を免れるためではなく、萩原恵美子の逮捕を免れさせるために原判示石川巡査に対して暴行を加えた行為は同法条に該当しないにかかわらず、原判決が被告人の行為に対し同法条を適用したのは法令の適用を誤つたものである。」というのである。そこで記録を調査すると、原判決がその挙示する証拠に基いて認定した事実は、要するに「被告人は原判示日時場所において内縁の妻である萩原恵美子と共謀のうえレールポンドを窃取したが、その犯行直後、同所を警邏中の石川巡査に発見され、被告人は逃走したが、萩原恵美子はその場で同巡査に逮捕されたので、これを見た被告人は同女の逮捕を免れさせるため再びその場に引返し、同所附近において所携のバールを以て同巡査の頭部その他を殴打し因つて同人に対し原判示のような傷害を加えたものである」というのである。而して叙上のように窃盗を共謀した者が犯罪の実行を終つた直後、犯行現場附近で巡査に発見され、共犯者の一人は逃走したが、他の一人が逮捕されたときに、逃走した犯人がその場に引返して、その共犯者の逮捕を免れさせるために巡査に暴行を加えたような場合は、その法律的評価において窃盗犯人がみずから自己の逮捕を免れるために暴行を加えた場合となんら異るところがないから、かかる場合においてもまた刑法第二三八条所定のいわゆる準強盗罪が成立するものと解するのを相当とする。従つて原判決認定のように、被告人と萩原恵美子との間に窃盗の共謀があつたと認められる限り、被告人の原判示行為に対して同法条を適用した原判決は正当であるというべきである。所論は、「右のような見解は刑罰法規の類推解釈であり罪刑法定主義に違反するものである」と主張するが、それは刑法第二三八条の立法の趣旨から当然に是認せらるべき結論であつて、刑罰法規の類推解釈ではなく、また罪刑法定主義に違反するものでもないから、所論はこれを採用できない。要するに、原判決には所論のような法律の解釈適用を誤つた違法はないから論旨は理由がない。

(花輪 山本 下関)

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