東京高等裁判所 昭和31年(う)735号 判決
被告人 久保田秀夫
〔抄 録〕
一、論旨第二点について。
原判決は、判示第二の別表六の犯罪の場所については屋代東高等学校事務室と認定し、判示第二の別表一七の犯罪の場所については滋野小学校職員室と認定しているが、原判決の挙示した証拠によると、前者については事務室及び職員室(宮下及び山田の被害場所は事務室、柴田及び宮本の被害場所は職員室)であり、後者については職員室及び応接室(掛川及び学校の被害場所は応接室、その他の五名の被害場所は職員室)であることは所論のとおりである。思うに犯罪の場所は訴因を特定するための一要素であるから、できる限り正確に表示することを要するけれども、同一建物内の数個所から窃盗したような場合の犯罪の場所としては、如何なる建物の如何なる場所から窃取したと一々具体的に表示しないで或特定の建物内で窃取したと表示しても、これが他の訴因と区別し難い場合は格別然らざる限りこれを以て犯罪の場所が特定されていないということはできない。記録によると前者は屋代東高等学校の同一建物内の事務室及び職員室であり、後者は滋野小学校の同一建物内の職員室及び応接室であつて、本件各訴因中には各当該学校内においてその頃他に同種の被害があつたという訴因はなく、従て犯罪の場所を当該学校内と表示しても訴因の特定を害することはないのである。原判決はこれを更に詳しく表示するに当り各一部屋だけを表示したのは、前者については事務室等においてと、後者については職員室等においてと各表示するのを等の字を記載するのを誤つて脱落したものとも考えられ聊か妥当を缺くとのそしりを免れないが、しかしこれを以て判決に理由を附しないとか判決の理由にくいちがいがあるということはできないから論旨は理由がない。
二、論旨第三点について。
原判決は被告人の前科として「昭和二十年十一月七日松本区裁判所で窃盗罪に因り懲役八年(昭和二十一年勅令第五百十二号により懲役六年に変更せらる)」と判示し、刑法第五十六条第一項第五十七条を適用しているが、累犯の要件としては前に懲役に処せられたというだけでは足りずその執行を終り又は執行の免除のあつた日より五年内に更に罪を犯し有期懲役に処すべき場合でなければならない。然るに原判決は前記の如く被告人が昭和二十年十一月七日窃盗罪で懲役に処せられたと判示しただけで、その執行を受け終つたかどうか又は執行の免除を受けたのかどうか何等判示するところがないから、原判決は判決に理由を附しなかつた違法があり、論旨は理由がある。
(大塚 渡辺辰 江碕)