大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)919号 判決

被告人 丸山巖

〔抄 録〕

原判示事実は、原判決挙示の証拠によつてこれを認めることができ、記録を精査するも原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認の過誤はないところ、所論によれば、被告人の本件犯行は中止犯である旨主張するのであるが、本件犯行は昼間の犯行にかかり、原判示被害者方が妻女一人だけであるとの事情こそ同女をジヤツクナイフで脅迫することによつて容易に金品強取の目的を達成せしめ得るものがあつたというべくそれが、被告人の予想に反して同女の夫も隣座敷に在宅していたとの事実は、とりもなおさず、所期の犯行を著しく困難ならしめるに至るべき事情であつたということができる。原判示事実によれば、被告人は、金品を強取しようとして、右妻女にジヤツクナイフを突きつけ更に逃げる同女を六畳間まで追いつめて脅迫しその反抗を抑圧したが、同女が隣座敷にいた夫に救いを求めたため主人の在宅中であることに気づいて爾余の犯行を放棄して金品強取の目的を遂げなかつたものであるというのであるから、その所為は明らかに障碍未遂の所為に属し、これが所為につき中止犯の観念をもつて律すべきかぎりではない。而して、原審は、その判決で、右事実を認定した上刑法第二百四十三条、第二百三十六条第一項を適用した上同法第四十三条前段(これは刑法第四十三条本文の誤と認める)に従がいその刑を減軽して、被告人の所為につき障碍未遂の事実を認定していることが明らかであり、原審においてこれが事実を認定している以上、原審は所論中止犯の主張に対する判断を示したものというべきをもつて、原審が判決にこれが主張に対する判断を示さなかつたとの主張はこれを採用できない。論旨はすべて理由がない。

(三宅 河原 遠藤)

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