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東京高等裁判所 昭和31年(く)80号 決定 1956年10月29日

本籍 新潟県○○郡○○村大字○○一〇〇番地

住居 不定

少年 土工牛山次雄こと金田良一(仮名) 昭和十三年一月十一日生

抗告人 少年

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由の要旨は、自分の本名は金田良一であつて、牛山次雄又は牛山次夫ではなく、本籍は新潟県○○郡○○村字○○で、出生は昭和一〇年一一月五日(従つて、満二一才)であつて、少年ではないから、もう一度取り調べてもらいたいというのである。

ところで、抗告人は原裁判所において審判終了に至るまで、本籍、住居、実父母、家族関係、氏名、生年月日等について虚偽の陳述をし、牛山次雄、昭和一三年一月一一日生として、原決定を受けたのであるが、昭和三一年一〇月一七日附横浜家庭裁判所裁判官井上武次の意見書によれば、少年の本名は金田良一であるが、生年月日は昭和一二年一〇月四日であることを知り得るので、家庭裁判所の審判の対象であつたことは、まちがいない。しかも、少年に対する一件記録にあらわれた所から観ると、その生育歴、家庭環境、保護者との関係等の点に徴するに少年に対しては、適確な指導乃至は必要な補導を施すことが相当であると認められる。それで、原裁判所が保護処分として少年を中等少年院に送致する旨の決定をしたのは、まさに、その所であり、該決定を非難すべき余地はない。してみれば、本件抗告は理由がないので、少年法第三三条第一項に則つて、主文のように決定する。

(裁判長判事 中野保雄 判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道)

別紙(原審の保護処分決定)

少年 牛山次夫こと牛山次雄(仮名) 昭和十三年一月十一日生 職業 土工

本籍 新潟県○○郡○○村大字○○○○○

住居 不定

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

事実

少年はB(当二二年)外一名と共謀の上、昭和三一年九月三日午後一〇時五〇分頃川崎市○○○町一の二番地鉄工所K方鉄断材置場において同人所有の鉄断材二個約二貫匁位(価格四〇〇円相当)を窃取したものである。

適条

刑法第二三五条、第六〇条

少年の生育歴、性格等

少年は本籍地において小学校卒業後、農業に従事し、その後新潟県下において土工、大工などをしていたものであるが、昭和三〇年八月頃上京し、東京都、川崎市方面において簡易宿泊所などに止宿し、土工などに従事する中、本件非行を惹起したものである。鑑別の結果、少年は普通の知能(田中B式1、Q=九四)を有するも、自己中心性、劣等感などが強く、怠惰浮浪性、嘘言癖が認められ消極的性格である。従つて前記生育歴も一応の推定によるものである。

家庭環境等

少年は嘘言癖強く、その供述もあいまいで調査、審判の段階において家庭その他家庭環境は明らかにされず、少年の上京などと相俟つて、少年に対する保護能力は欠除しているものと認められる。なお保護者の住所も明らかでなく、本籍地宛の呼出にも応じない。又少年の最近の居住地である川崎市内には、適切な保護者も見当らない。

仍て以上の諸点を綜合して、少年に対しては少年院における矯正保護教育を施す必要があるものと認め少年法第二四条第一項第三号により主文のとおり決定する。

(昭和三一年一〇月一日 横浜家庭裁判所 裁判官 井上武次)

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