東京高等裁判所 昭和31年(ツ)60号 判決
本件記録によれば、上告人が第一審と第二審とで文書の提出命令を求め、それに対する被上告人の答弁及び裁判所の処置が上告人の主張のとおりで、原審においては、明らかに上告人の右申立に対し裁判をなさなかつたことを認めることができる。原審が上告人の文書提出の申立に対し、明らかに裁判することなく弁論を終結したのは、原審が右申立を不必要と認めて暗默に却下したものと認めるを相当とする。上告人は文書提出の申立に関する決定に対しては民事訴訟法第三一五条によつて即時抗告ができるから、原審が明示的に却下決定をなさないのは不法であると主張するが、同条は裁判所が文書申立に関し決定で裁判をなしたときは即時抗告をなし得ると規定しているのみで、本件のように、当事者に即時抗告を申立てる機会がなかつた場合には、上告人の本件においてなしているように、判決に対する上訴で主張すればたりるので、上告人から完全に不服の道を奪つているのではないから、原審が上告人の文書提出の申立を決定で明示的に却下しなかつたからといつて、直ちに違法であるとはいえない。右文書提出の申立は証拠申出の一種であるから、裁判所は常にこれを許容しなければならないものではなく、民事訴訟法第二五九条によつて不必要と認めた場合には、右申立を却下することができるところ、右文書によつて上告人が立証しようとした事実については、右文書が上告人主張のように、唯一の証拠方法でないことも本件記録によつて明であるから、被上告人が右文書を所持しているかどうかの点について審判するまでもなく、原審が上告人の右文書提出の申立を却下したのは、なにも違法のものでないといわなければならない。
(柳川 村松 中村匡)