大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)11号 判決

訴外水野栄久男及び西村逸造が共に代表取締役となつている訴外栄商事株式会社は昭和二八年六月頃現在で約八百万円の債務を被控訴金庫に対し負担しており、同年七月頃右両名は被控訴金庫の小岩支店長から栄商事の右債務について、水野及び逸造個人の不動産を担保に提供する外、逸造の子である控訴人西村逸平及び同人が代表取締役となつている株式会社西村質店所有の不動産をも担保に提供することを要求されたので、水野及び逸造は控訴人等の不動産を担保に提供することについては強硬に拒否したところ、被控訴金庫は水野及び逸造に対し、控訴人等の手形を差入れることを要求し、もし応じなければ爾後栄商事株式会社との取引を継続しないということであつた。その頃被控訴金庫からは控訴人等に対しても一、二度、栄商事株式会社の被控訴金庫に対する前記債務について、「面倒を見てやつて貰いたい」という申出があつたが、控訴人逸平は当時自己の営業状態が悪かつた際とて、到底父逸造の債務まで保証をするとか、手形を入れるとか担保を供するとかすることはできないといつて右申出を拒絶していたのに、西村逸造は控訴人逸平方帳場にあつた控訴人等のゴム印及び印鑑を、控訴人逸平に無断で持ち出し、右ゴム印及び印鑑を使用して西村逸造が本件手形及びその符箋に押捺しこれを被控訴金庫に差し入れた。

証拠を総合すれば以上のとおり認めることがことができるから、従つて本件手形は控訴人の全然関知しないもので偽造せられたものと認めるのを相当とする。しからば控訴人は被控訴人に対し、なんら本件手形上の債務を負担するものではないから控訴人等に対し本件手形金の支払を求める被控訴人の本訴請求は失当であつて棄却を免れない。これと趣旨を異にする原判決は失当で本件控訴はいずれも理由がある。として、原判決中控訴人に関する部分を取り消し、被控訴人の請求を棄却した。

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