東京高等裁判所 昭和31年(ネ)1152号 判決
右認定の事実によれば、黒崎平兵衛は黒崎家の家政全般の処理に当つていたものであり、且その処理に伴い控訴人から少くともその財産の一部についてはこれを処分する権限を与えられていたものであつて、黒崎平兵衛において、特に本件土地につき控訴人に代りこれを処分する権限は与えられていなかつたとしても、前示売買契約はなお権限外の行為をなした場合に当るものというべきである。更に上記認定のように、黒崎平兵衛は黒崎家の世帯主として同家の家政全般を処理していた事実と、(中略)被控訴人は黒崎平兵衛から本件土地処分につき控訴人の承認をえており右代金はこれを黒崎家の負担する租税、手間代、肥料代に充てる旨を告げられたこと、及び本件土地売買契約書(甲第一号証の一)の控訴人氏名下の印影が被控訴人において昭和二十五年六月十七日控訴人から山林六筆を買い受けた際作成された契約書(甲第二号証)の控訴人名下の印影とが同一であつたことに徴すれば、被控訴人において黒崎平兵衛に控訴人に代り右売買契約をなす権限があるものと信じたと認められ、且このように信じたことにつき正当の理由を有していたものというべきである。
(牛山 岡崎 渡辺一)