東京高等裁判所 昭和31年(ネ)1898号 判決
控訴人の借地法第一〇条による建物買取請求について考える。別紙目録(二)記載の建物について控訴人が昭和三十三年二月二十四日の当審口頭弁論期日において被控訴人に対し右法条に基く買取請求の意思表示をなしたことは記録上明らかであるから、右買取請求は成立に争のない甲第五、第九号証の各一、二によつて認められる被控訴人が訴外太田直砂に対し昭和二十九年一月十七日附同月十九日到達の内容証明郵便を以て昭和二十五年九月分より昭和二十八年十二月分までの一ケ月坪当り金二十円の割合による賃料を五日以内に支払うべき旨催告し、これが支払なきことを条件として土地賃貸借を解除する旨意思表示をなし、更に同月二十七日附翌二十八日到達の内容証明郵便を以て無断賃借権譲渡を理由として土地賃貸借を解除する旨意思表示をなした後になされたものであることは明らかである。しかし借地法第一〇条所定の買取請求権を行使するには建物譲受当時に土地賃借人がその賃借権に基いて該建物を建築所有していれば足るものであつて、右買取請求権行使当時右土地賃借権の存することは敢えて必要としないものと解するを相当とするところ、上来認定したとおり、別紙目録(二)記載の建物は控訴人が訴外太田直砂より同人建築所有の木造木羽葺平家建住家兼工場一棟建坪十坪五合の所有権を譲受けた後、昭和二十六年中にその一部を取毀し残部を住宅向きに構造を改めたにすぎないものであり、右譲受当時右太田はその敷地たる前記二十五坪の土地に対し賃借権を有していたのであるから、控訴人が右法条に基く買取請求権を有しないとの被控訴人の主張は採用することができない。
(柳川 坂本 中村)