大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)2297号 判決

次に、控訴人は、橋本友孝、同つるは、被控訴人の代理人として配給物などを受け取る代理権限を有し、右代理権を超越して右連帯保証をしたものであり、控訴人は同人らに代理権ありと信ずるにつき正当の理由を有したものである、と主張するので考えるに、橋本友孝、同つるの両名が右の如き代理権限を有していたことは被控訴人の認めるところであり、同人らが本件連帯保証契約の当時なお前記惰円形の「波田野」と刻んである印顆を預つていたことは当審における証人橋本友孝の証言によりこれを認めることができるから、右日時橋本友孝、同つるが右の如き代理権を有していたことは明らかであるけれども、本件連帯保証は右代理権を甚しく超越するものであり、原審並びに当審証人橋本造酒蔵、原審証人岡田弘吉の各証言によれば、控訴人の職員は前段認定の橋本友孝に対する貸付の前に、一度も被控訴人に連帯保証の意思の有無につき問い合せもなさず、被控訴人の印鑑証明書も徴することなく、橋本友孝、同つるが「波田野」なる認印を控訴人馬込支店に持参し、借用金証書に連帯保証人として被控訴人の氏名を記載し、これに捺印するのを現認しながら、同人らがこのような代理権を有するものと信じて橋本友孝に金員を貸し与えたことが認められ、右のような事実関係の下においては、たとえ被控訴人と橋本友孝、同つるとの間に控訴人主張の身分関係ないしは生活関係があつたにせよ、控訴人は取引上通常必要とされる注意義務を怠つたものというの外なく、控訴人において橋本友孝、同つるが被控訴人を代理する権限を有することを信じたことにつき正当の理由を有したものということはできないから、被控訴人は橋本友孝、同つるの右無権代理行為につきその責に任ずるを要しないものというべきである。

次に、控訴人は、被控訴人がその認印を橋本友孝、同つるに交付し、これが使用を許した、と主張し、右は商法第二十三条民法第百九条にあたる行為である、と主張しているけれども、本件の場合が商法第二十三条に該当しないことは、同条の明文によつて疑を容れないところであり、民法第百九条が本件に適用があるとするためには、被控訴人が控訴人、ないしは控訴人をふくむ一般第三者に対し、橋本友孝ないしは同つるに橋本友孝の借入の金員の返還債務につき連帯保証をなす代理権を与えた旨を表示したことを要するものというべきところ、当事者間に争のないところの、被控訴人が配給関係などに使用せしめるため被控訴人の認印を橋本友孝、同つるに預けておいたことが、同人らに連帯保証の代理権を与えたことを表示したものと解することができないことは明らかであり、その他本件一切の証拠を調べてみても被控訴人が橋本友孝、同つるにこのような連帯保証をなす代理権を与えたことを表示したと認められる証拠は一つもない。それ故被控訴人に民法第百九条にあたる行為があつたことを前提とする控訴人の主張もまた排斥を免れない。

(大江 坂本 猪俣)

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