大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)2329号 判決

記録を調査するに控訴人は、控訴人を当事者参加人、被控訴人吉田米一を原告、大一冷蔵株式会社を被告とする静岡地方裁判所昭和三十年(ワ)第四〇二号、昭和三十一年(ワ)第四七号株券発行請求事件について、昭和三十一年十月十五日控訴人(当事者参加人)敗訴の判決を言渡され、同年十月二十三日右判決正本の送達を受け、控訴提起期間である同年十一月五日控訴状を当裁判所に提出したが、右控訴状には、被控訴人として「奈良市橋本町一番地、宋瑞読」と全く別異の者の氏名を記載し、且つ第一審判決の表示として、前示事件名、判決主文の内容並びに判決言渡及び判決正本の送達を受けた年月日を摘示してあるけれども、原裁判所たる「静岡地方裁判所」の記載を脱落していたこと、この点に気附いた控訴人訴訟代理人は、控訴提起期間経過の翌日である同年十一月七日当裁判所に控訴状補正申立書を提出し、被控訴人の氏名住所を「豊橋市前田南町百二十八番地、吉田米一」と訂正し、原裁判所として「静岡地方裁判所」と補正したものであること、なおさきに提出した控訴状に添附せられた訴訟代理委任状には、相手方として吉田米一と記載されており、委任事件としては静岡地方裁判所の表示を欠くも「昭和三十年(ワ)第四〇二号、昭和三十一年(ワ)第四七号事件に対する控訴申立に関する一切の件」と記載されていることの各事実を認めることができる。

以上の経緯に徴して考うるに、前示控訴状に被控訴人として第一審判決の相手方とは全く異なる他人の氏名を記載し、且つ第一審判決を表示するに当り原裁判所たる「静岡地方裁判所」の表示を脱落している点において、右控訴状は民事訴訟法第三百六十七条第二項の要件に欠くるところあるものであるけれども、前示摘録にかかる右控訴状及びこれに添附せられた訴訟委任状の他の記載によれば、少くとも前示敗訴の判決を受けた控訴人がこの判決に対し不服の申立をなす趣旨であることを窺知するに足りる。そしてかかる場合に控訴裁判所の裁判長が民事訴訟法第二百二十八条の規定を準用し一定の期間を定めその期間内に欠缺の補正を命じ得ることは、同法第三百七十条の規定により明白であつて、当事者が期間内に補正をしたときは、右補正が控訴期間経過後であつても最初不服の申立をなした時に遡り適法な控訴状が提出せられたと同一の効力を生ずべきことは、補正命令を認めた趣旨に徴して疑のないところである。そしてこの理は、控訴裁判所の裁判長がその補正を命ずるに先だち当事者が進んで控訴状の記載要件の欠缺を補正した場合においても、別異に解すべき根拠はないから、本件において控訴人が控訴提起期間経過の翌日前示の如く当事者並びに第一審判決の表示を補正したことによつて、控訴状の欠陥は治癒せられ、控訴状提出の時に遡りその効力を生ずるものと解ずるを相当とする。従つてこの点に関する被控訴人吉田米一の主張は理由がない。

(本件控訴審における当事者についての判断)

次に職権を以て記録を調査するに、控訴人は被控訴人吉田米一を原告、大一冷蔵株式会社を被告とする静岡地方裁判所昭和三十年(ワ)第四〇二号株券発行請求訴訟の繋属中、民事訴訟法第七十一条により右当事者双方を相手方として右訴訟に独立当事者参加をなし(同庁昭和三十一年(ワ)第四七号)、原裁判所は右原告対被告間、参加人対原告及び被告間に存する係争につき一個の判決を以て、原告勝訴被告並びに参加人敗訴の判決を言渡し、これに対し参加人(控訴人)が本件控訴に及んだものであること明らかである。

そして右控訴状及び前示補正申立書には、被控訴人として第一審被告である大一冷蔵株式会社の表示はないが、元来民事訴訟法第七十一条による独立当事者参加訴訟にあつては、三当事者間相互の争は矛盾牴触することなく解決せらるべき必要あるにより、同法第六十二条の必要的共同訴訟の特則を準用しているのであるから、右参加訴訟において原被告双方を相手方とする参加人が敗訴し、右判決に対しその一方のみを被控訴人として控訴した場合と雖も、前記民事訴訟法第六十二条第二項の準用により、その上訴は他の一人に対しても効力を生じ、三当事者間に存する争はそのまま控訴審に移審せられ、控訴裁判所の審理の対象となるものというべく、従つて本件の場合第一審被告大一冷蔵株式会社は、本件控訴により被控訴人としての地位を取得したと解すべきである。

(斎藤 坂本 小沢)

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