東京高等裁判所 昭和31年(ネ)2403号 判決
控訴人は、「丸大商店星野愛作」なる本件手形受取人の表示は、被控訴人が原審において自白したように星野愛作個人を意味するものであり、第一裏書人は明らかに「株式会社丸大商店」であるので、その間裏書の連続を欠き、被控訴人は本件手形の適法な権利者でないと主張するので按ずるに、このような場合には、これを後の裏書人の記載と比較し、取引上の通念に従つて受取人の表示内容を実質的に特定し、連続の有無を判断するのが相当である。何となれば、手形取得の場合に、手形面による判断以外の調査を手形取得者に要求することは手形の流通を阻害する結果を招く虞があり、手形法第七十七条の準用する同法第十六条の趣旨に反することとなるからである。本件手形面の表示を見るのに、前者は「丸大商店星野愛作」とあり、後者は「株式会社丸大商店代表取締役星野愛作」とある。その間「丸大商店」なる商号を共通にし、これを比較するときは、本件手形の受取人は株式会社丸大商店であつて、星野愛作は同会社を代表する代表取締役であるため記載せられたに止まり、第一裏書の裏書人の表示との間には正確な一致はないけれども結局両者の同一性については欠けるところがないと認めるのが相当である。控訴人は、前者の表示は星野愛作個人を指すものと解すべきであると主張しているけれども、裏書の連続の有害を決定するのに手形面の記載以外の資料を用いるべきものでないことは、前段説示したところによつて明らかであり、控訴人の右主張は採用できない、としてこれを棄却した。