大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)2813号 判決

(一) 当審において新たに本件にあらわれたすべての資料によつても右一応の認定を動かすに足りない。

(二) 控訴人の本件実用新案の登録出願前その構造の大部分がすでにわが国において公知公用であり、このような部分を除いた部分のみが本件実用新案の要部であり、このような観察のもとにおいては控訴人の製作販売する哺乳瓶の構造は本件実用新案の哺乳瓶の構造の要部を欠き、従つてこれと同一又は類似のものといえない旨の控訴人の主張(原判決事実摘示の控訴人の主張二の(一)乃至(四))につき、本件における以上認定の事実関係のもとに於ては控訴人が公知公用であると主張する部分が本件実用新案の権利範囲に属するものとは解することができないから、右主張はこれを認容することができない。

(三) 控訴人主張の本件登録実用新案の哺乳瓶の乳首の構造と控訴会社の製造販売に係る哺乳瓶の乳首(原判決添付別紙目録第三表示のもの)の構造における円形座板下面の突条の形状の相違は右円形座板の全体の構造から見れば結局構造上の微差に過ぎないものであつて、この差異あるが故に両考案が非類似のものであると解することはできない。尚又右構造に伴う作用効果の点につき控訴人主張の取付輪を強く締め付けたとき突条が円形座板内に没入すると言うようなことは程度の差はあつても両考案につき同様と認められるし、又間隙が全く潰れる程度に取付輪を強く締めつける様なことは右乳首の本来の用途から見て通常の使用方法としてはあり得ないことと認められるから、作用効果の点で両考案の間に控訴人主張のような差異があるものとすることもできない。当審証人横畠敏介の証言により成立を認め得る乙第三十二号証記載の同証人の鑑定内容、当審証人大野晋の証言により成立を認め得る乙第三十号証記載の同証人の鑑定内容中右の点に関する部分は採用するに足りない。

(四) 原判決理由中管轄違の抗弁に関する部分はこれを除く。

ということを附加する外、原判決に記載してあると同一である。

〔編註〕 本判示は控訴理由中左の部分に対する判断である。

本件登録第三九四九七八号実用新案における物品に関する型の新規な工業的考案として認められ法の保護を受けるべきものとして考えられる部分はゴム製乳首の構造そのものにあつて、その以外の部分には及ばず、他方控訴会社製造の哺乳瓶におけるゴム製乳首は「ゴム製乳首の下部に形成された円形座板の下面において円形座板を一方的に傾斜状に作りその横断面の断層が段丘状、即ち、<省略>となるように形成された構造」のものであり、両乳首の構造を技術的に対比すれば

(1) 前者のゴム製乳首ではその前記円形座板の横断面の断層が<省略>字状をしているに反し、後者の乳首ではその円形座板の横断面の断層が<省略>状をしているという重要な差異がある。従つて

(2) 前者における断層<省略>字状の頂部には狭い一定の幅を持つた直線的な帯状を呈しているが、後者の断層には如上のようなものは絶無であるという差異がある。

従つて両者は全く別異の構造の非類似のものであることが明らかであつて、控訴会社がその哺乳瓶を製造販売することにより本件実用新案権を侵害しているものではない。然るに原判決が両考案の類否を判定するに当りその作用効果を対比し、これに基いて控訴人が本件実用新案権を侵害しているものと論定したのは失当である。

更に又両考案はその構造が類似していないばかりでなく、その構造に伴う作用効果も同一又は均等でない。即ち乳首の性質上本件登録実用新案のものは取付輪を強く締め付けたときは突条は座板内に没入して間隙が潰れるような傾向を生ずるけれども、控訴会社のものではそのような場合漸次広い面で瓶口に接するようになつていて間隙は小さくなるが依然残つて通気を行うようになつている。即ち、後者の円形座環の下面は円周を三等分して放射状に直立面を有し、これより締付方向に漸次低くした斜面を形成させて、緩い鋸歯状の凹凸面とし、通気路は鋭三角形としてある。従つて構造に伴う作用効果の点から考えても控訴人はその哺乳瓶の製造販売により本件登録実用新案権を侵害していない。

訴外柳瀬正三郎は昭和三十二年二月四日に訴外柳瀬繁三に、同人は同月五日控訴人に順次登録第一二〇五〇七号意匠権を譲渡した結果同権利は現在控訴人に属する。尚本件仮処分事件の第一審本案訴訟が東京高等裁判所に専属するから本件仮処分事件が管轄違のものであるとの抗弁はこれを主張しない。

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