東京高等裁判所 昭和31年(ネ)286号・昭32年(ネ)636号 判決
一般に不法行為による物の滅失毀損に対する通常生ずべき現実の損害賠償額は滅失毀損当時の交換価格によつてこれを定むべきであるが、若し不法行為なかりせば被害者がこれを利用して転売その他の方法により確実に利益を得たるべき特別の事情あるときは、このことを加害者において不法行為の当時予見しまたは予見し得べかりし場合に限りこれに相当する損害についてもその賠償の責に任ずべきものと解すべきである。ところで本件未伐採の残立木(原木)の減失毀損に因る損害については第一審原告は右原木の価格の外これを、まき、そだに製材して他に売却して得べかりし利益の喪失による損害についてもこれが賠償を請求しているのであるが、原審証人木村重の証言及び原審における第一審原告の本人尋問の結果によれば第一審原告は農業兼薪炭業を営み、他から買受けた立木からまき、そだを製出しこれを他に販売して利益を得ることを業とし、曾て第一審被告からも数回同様の目的で立木を買受けたこともある事実を認め得べくこれら事実と第一審原告の買受けた立木の数量その他弁論の全趣旨に徴すれば前示不法行為当時第一審被告においてもかかる特別の事情に因り生すべき損害の発生についてもこれを予見し若しくは予見し得べかりしものと推認するのが相当である。
(柳川 坂本 中村匡)