東京高等裁判所 昭和31年(ネ)575号 判決
訴外渡辺菊次郎が被控訴人宇野沢から本件土地を買受けたのは昭和二十四年七月五日、被控訴人村上のために右仮登記の手続がされたのは昭和二十九年三月十九日であることは前説示のとおりであり、被控訴人が売買を完結したことについての主張立証は存しないのであるが、被控訴人が売買の手続を進め右仮登記について本登記をすれば今后右訴外人が本件土地について所有権移転をうけても被控訴人村上の登記より後順位とならざるを得ない状態に在ることは疑を容れない。即ち被控訴人村上が右本登記を先にすませば、右訴外人はもはや所有権移転登記手続請求権を行使するに由なく、またもし右訴外人のために所有権移転登記をすましても被控訴人の本登記があとにひかえていては右訴外人の所有権は安穏ではあり得ない。かような場合に先に本件土地を買受けた右訴外人が、後に売買の予約をしたに止り、未だその完結、本登記をしていない被控訴人村上に対して右仮登記の抹消手続を求めることは、右訴外人の所有権の完全な具現をはかるための当然の要求と謂わなければならない。
(梶村 岡崎 堀田)