東京高等裁判所 昭和31年(ム)1号 決定
先づ、当裁判所が右抗告事件につき申立人より抗告理由書の提出されてあつたことを看過し、これが提出なきものとして判断し、抗告棄却の決定をしたことは、抗告人の主張するとおりである。よつてこのことが果して再審申立の事由となりうるか否かにつき、審按するに、強制執行の為にする不動産競売手続開始決定があり、これに基き競売手続が進行中、抵当権実行の為にする競売の申立があつて、該申立書が執行記録に添付されるときは、これにより配当要求の効力を生じ、また強制競売手続にして停止取消となる場合は、爾後手続は任意競売の申立によつて開始したものとしてこれを続行するのであるが、然らざる限り右記録添付後と雖も競売手続自体としては強制競売に関する民事訴訟法の規定に基き進行すべきことは当然であつて、それが強制競売であると共に一面任意競売たる性質を帯び不動産競売に関する民事訴訟法並びに競売法の規定が併せて適用されるとの前提に立つ抗告理由は到底採用の限りでない。それのみでなく、他の利害関係人に対し競売期日の通知がなされなかつたことを非難する抗告論旨は、民事訴訟法第六百七十三条第六百八十一条競売法第三十二条により、競落に対する異議従つて競落許可決定に対する適法な抗告理由となり得ないこと明らかである。それ故当裁判所が前記抗告事件の審理に当り、抗告理由書の記載内容につき判断したとしても、抗告棄却の結果となることには変りない筈であるから、右抗告理由に対する判断を与えなかつたことは、民事訴訟法第四百二十条第九号に規定する、裁判に影響を及ぼすべき重要なる事由につき判断を遺脱したとある場合に該当せず、適法な再審事由となるものではない。(なお、この場合憲法違反の問題は生じ得ない。)
(薄根 奥野 山下)