東京高等裁判所 昭和31年(ラ)478号 決定
一、本件記録によれば、次の事実が認められる。
(一) 抗告人は昭和二十八年十一月二日甲府地方裁判所に相手方を債務者として、有体動産仮差押命令の申請をなしたところ(同裁判所昭和二十八年(ヨ)第一一〇号事件)、同裁判所は同日抗告人に保証として金十二万円を供託させて仮差押決定をなし、抗告人は翌三日これが執行をなした。
(二) 右本案事件である甲府地方裁判所昭和二十八年(ワ)第三〇八号貸金請求事件及び東京高等裁判所昭和三十年(ネ)第一一四号同控訴事件において、抗告人は敗訴の判決を受け同判決は確定したが、抗告人は昭和三十一年四月六日前記仮差押命令申請事件を取り下げると共に、その執行処分を取り消した。
(三) 甲府地方裁判所は昭和三十一年五月九日抗告人の申立により「被申請人(相手方)は、この書状送達の日から十四日以内に担保権利者としての権利を行使せよ。」との催告をなし、同書面は同月十日相手方に発達された。
二、しかるに相手方が、右書面が送達された日から十四日の期間内である昭和三十一年五月二十四日までに、抗告人に対し訴を提起して、権利の行使をした事実は、これを認めることができないから、相手方は民事訴訟法第百十五条第三項により、本件担保の取消について同意をしたものとみなされなければならない。
三、もつともその後昭和三十一年五月二十六日付で相手方が甲府地方裁判所へ提出した「権利行使の申出書」添付の証明書によれば、相手方は同日抗告人を被告として甲府地方裁判所に担保権利者としての権利行使のため損害賠償請求の訴(同裁判所昭和三十一年(ワ)第一〇四号事件)を提起した事実が認められるが右訴の提起は、これより先催告書所定の期間の徒過により担保権利者の同意をしたものとみなされた前記法律上の効果を左右することはできないものと解せられる。
(内田 原増 高井)