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東京高等裁判所 昭和31年(ラ)843号 決定

よつて、按ずるに、本件記録に徴すると、債権者日本信託銀行株式会社は債務者日本特殊産業株式会社に対して金六百五十万円及びこれに対する昭和二十七年三月二日以降日歩金十銭の割合の損害金債権を有するものとして抗告人所有の本件建物に対して抵当権実行に基く競売の申立をしたので、原裁判所は競売開始決定をなし競売手続を進行して本件競落許可決定をしたことが認められる。

ところで、抗告人の主張するところは、本件競売手続における利害関係人たる抗告人に対して昭和三十一年十月三十一日午前十時の競売期日(本件競買申出のあつた期日)は本件建物の所有者たる抗告人に対して通知されなかつたというにある。抵当権実行に基く競売手続にあつては利害関係人に対して競売期日を通知しなければならないことは競売法第二十七条の規定するところであつて、抗告人は本件競売不動産の所有者であることは本件記録中の資料によつて疏明されるから、抗告人に対して競売期日を通知しなければならないことは勿論である。そこで、本件記録を調べてみると、昭和三十一年十月三十一日午前十時の競売期日通知書が抗告人宛に送達されたことを認むべき資料がない。然しながら、本件競売手続における債務者たる日本特殊産業株式会社の代表取締役は抗告人猪股功であることは本件記録中の東京法務局世田谷出張所法務事務官佐野直作の証明書(第九丁)根抵当権設定契約証(第一〇丁)右会社が申立人となつた抗告状(三〇九丁、三二二丁)などに徴して疏明される。そして、本件記録中の前記会社に対する前記競売期日通知書の送達報告書(四九三丁)によると、右通知書は同会社の代表取締役猪股功宛に発送されたところ、同通知書は同月十一日渋谷区代々木初台町四百九十七番地(抗告人の住所と同一である)において猪股功がこれを受領したが、執行吏代理熊谷岳雄が求めによつて代書し猪股功はこれに捺印していることが認められる。従つて右の競売期日は特に猪股功個人宛にはなされなかつたとはいえ、同人が代表取締役をしている前記会社に対する競売期日の通知書を同会社の代表取締役として同人がこれを受領して右競売期日を知つた以上、抗告人に対しても競売期日の通知がなされたものと認むべきであつて、同人宛に競売期日の通知書が送達されていないからといつて右競売期日になされた競売手続を違法ということはできない。従つて、これに基いてなされた本件競落許可決定は正当であるといわなければならない。

(浜田 仁井田 伊藤)

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