東京高等裁判所 昭和32年(う)1833号 判決
被告人 高野袈裟雄
〔抄 録〕
弁護人の控訴趣意第一点について。
原判決が、その認定判示した被告人の所為中、須田みさのらに対する殺人未遂の点につき刑法第一九九条、第二〇三条を、同人らの身体を害せんとする目的で爆発物たるダイナマイトを使用した爆発物取締罰則違反の点につき同罰則第一条を各適用し、右両者が一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるとして、刑法第五四条第一項前段、第一〇条に則り、重い爆発物取締罰則違反罪の刑によつて処断していることは、所論のとおりであつて、所論は、右は、法令の適用を誤つたものであり、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかである旨を主張する。よつて案ずるに、爆発物取締罰則第一条と刑法第一九九条とが競合する場合には、刑法第五四条第一項前段の例によることなく、爆発物取締罰則第一二条によるべきものと解されることは、所論列挙の大審院判例に照らし、所論のとおりであるから、原判決には、この点につき、法令の適用に誤があるものといわなければならない。しかしながら、本件においては、右のように、前示罰則第一二条に則り、同罰則第一条の法定刑と刑法第一九九条の法定刑とを刑法第一〇条によつて比照してみても、結局重い同罰則第一条の刑に従つて処断すべきこととなり、原判決の擬律と結果において変りがないことになるのであるから、原判決の犯した前示擬律の誤は、ひつきよう判決に影響を及ぼさないものというべく、従つて、原判決には、所論のような判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤があるものということはできない。論旨は理由がない。
(中西 山田 石井)