東京高等裁判所 昭和32年(う)2088号 判決
被告人 鈴木茂
〔抄 録〕
検察官の控訴趣意について。
よつて按ずるに本件公訴事実は刑法第二百三十五条の窃盗罪及び選択刑として罰金が定められている銃砲刀剣類等所持取締令第二条違反の罪であるからいずれも簡易裁判所が第一審として管轄権を有することは裁判所法第三十三条第一項第二号の規定によつて明らかであるが、簡易裁判所は同条第二項によれば同項但書所定の事件以外の事件については禁錮以上の刑を科することができないことになつており、また同条第三項刑事訴訟法第三百三十二条によれば、若しその制限を越える刑を科するのを相当と認めるときは、事件を決定で管轄地方裁判所に移送しなければならないことになつているのである。しかるに原審は前記裁判所法第三十三条第二項但書に掲げられている窃盗罪とこれに掲げられていない銃砲刀剣類等所持取締令違反の罪とが併合罪の関係にあるとしながら、自ら右銃砲刀剣類等所持取締令違反の罪につき所定刑中敢えて懲役刑を選択し窃盗罪の懲役刑に併合加重した刑期範囲内において被告人を懲役一年四月、執行猶予三年に処したものであるから原審は明らかに裁判所法の前記規定、刑事訴訟法第三百三十二条に違反したものであり、かくの如きは訴訟手続の法令違反というべく、その誤が判決に影響を及ぼすこと明らかであるから論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。
(加納 山岸 鈴木)