大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和32年(う)2091号 判決

被告人 横田信男

〔抄 録〕

ところで記録を調べてみると、原判決が罪となるべき事実として引用判示している(三)昭和三一年一二月二四日付起訴状記載の公訴事実第二の柳沢一郎より合計金五、〇〇〇円を騙取した事実について、原審がその対応証拠として挙示したものとみられる、証人柳沢一郎の原審公廷における供述なるものは、記録上かかる証人尋問のなされた跡の見るべきものの存しないこと、まことに所論のとおりである。しかして原判決が右事実認定の対応証拠として援用したとみられる他の証拠、すなわち阿部由松及び木暮正雄の検察官に対する各供述調書、右両名の各原審公判廷における証言、及び被告人の検察官に対する昭和三一年一二月一五日付供述調書第三項の記載などをもつては、とうてい右事実を証明するに十分とは認められない。であるから、結局原判決は右事実については証拠によらないでこれを認定したことに帰着し、刑事訴訟法第三一七条の規定に違背するものであつて、右訴訟手続の法令違反は判決に影響を及ぼすことが明らかである。しからば弁護人の控訴趣旨第一点の所論は理由があつて、原判決は破棄せらるべきである。

(中野 尾後貫 堀真)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!