東京高等裁判所 昭和32年(う)2419号 判決
被告人 大場正光
〔抄 録〕
本件控訴の趣意は末尾添附の弁護人K提出の控訴趣意書記載のとおりであるからここにこれを引用する。これに対する当裁判所の判断は左のとおりである。
被告人が所持していた匕首(あいくち)は刃渡十四・一センチメートルで十五センチメートル未満のものである。ところで昭和三十年法律第五十一号による改正前の銃砲刀剣類等所持取締令第二条により所持を禁止された「刀剣類」とは刃渡十五センチメートル以上の刀、匕首、剣、やり及びなぎなたをいうと規定してあつたから、(改正前の同令第一条参照)匕首についても十五センチメートル以上のものであることを要したのである。しかし右改正令第一条第二項はこの政令において「刀剣類」とは刃渡十五センチメートル以上の刀、剣、やり及びなぎなた並びにあいくち及び刃渡五・五センチメートルをこえる飛出ナイフをいうと改正され、あいくちに関する限り旧令とは異り刃渡に関する要件を除いていること明白である。従つて原判決が本件匕首の刃渡を判示せずして十五センチメートル未満のあいくち所持の事実を右改正令第二条違反に問擬しているのは違法ではない。ただ原審は右あいくち所持の期間を昭和二十七年頃より昭和三十二年七月二十二日迄と判示したので、改正令が施行された昭和三十年十月一日より以前の所持は違法とはいえないに拘らず、これを違法なものとして改正令第二条を適用したものというべく、法令の適用を誤つた違法があるといわなければならない。しかし原判決は右あいくち所持を期間の長短にかかわりなく一個の行為として処断していること明らかで、しかも改正令施行後の所持期間も相当長期となつているのであるから原判決の右の如きあいくち所持期間に関する法令適用の誤は判決に影響を及ぼすこと明らかとはいえない。
(加納 渡辺辰 山岸)