東京高等裁判所 昭和32年(う)2459号 判決
被告人 鄭東賢
〔抄 録〕
なお職権をもつて、原判決の法律適用の適否を調査すると、原判決は
(1) 本件犯罪が、さきに昭和三十一年十一月十九日宇都宮簡易裁判所で懲役十月に処する旨の確定裁判のあつた窃盗と刑法第四十五条後段の併合罪の関係にあるとしていることは正当であるが、その処断を定めた同法第五十条を適用していない。
(2) 刑法第四十七条を適用しているから、併合罪加重をしたと認めざるをえないが、本件の犯罪は一個であるから併合罪加重をしたのは違法である。
(3) 刑法第五十六条、第五十七条、第五十九条等を適用しているから、累犯加重をしたものと認められるが、原判決を精査しても、被告人の前科は全然判示されていないから、いかなる前科が本件犯罪と累犯の関係にあるのか全く不明である。これはまさしく判決に理由を付しないか、理由にくいちがいがあるものといわなければならない。
(4) 酌量減軽の規定である刑法第六十六条、第六十八条第三号を適用しているが、窃盗罪の最下限は一月であつて、仮に累犯、又は併合罪の加重をしても下限は加重されるものでないことは刑法第十二条、第四十七条、第五十七条等の諸規定に照らして明白であるから、仮に原判決のように被告人を懲役二月に処するについても、法定刑の範囲内でまかなえるのであつて、かかる場合にはとくに酌量減軽をする必要はないものである。
叙上のように、原判決には法令適用の誤りが存し、その内少くとも右(2)と(3)の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから原判決はこの点においてもまた破棄を免れないものである。
(三宅 河原 下関)