大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)2830号 判決

被告人 土谷和男

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意は要するに、原審の量刑を非難し、最近日本の裁判所に於ては数千万円の詐欺横領罪に付懲役十年足らずの刑を科し汚職選挙犯罪には殆ど刑の執行を猶予して居るが、本件は之等犯罪に比し万分の一の被害額にも達して居ないのに、原審が本件に付懲役十月の実刑を科したのは其の量刑不当に重く憲法第十四条のすべて国民は法の下に平等であるとの規定に違反する旨主張し、被告人の控訴趣意は量刑の不当を主張するに在る。

案ずるに、憲法第十四条は、すべての国民が人種、信条、性別、社会的身分又は門地等の差異を理由として政治的、経済的又は社会的関係に於て法律上の差別的処遇を受けないことを明らかにして法の下に平等であることを規定したのである。しかるに犯人の処罰は、かかる理由に基く差別的処遇ではなく、特別予防及一般予防の見地から各具体的事案につき妥当な処置を講ずるものであるからその処遇の異ることのあるべきは当然である。刑の量定は犯人の性格、年令、経歴、家庭状況、罪質、態様、犯罪後の情況等各般の事情を綜合考慮してなされるのであるから、所論の如く仮令被害額の点に於てはある他の事案に比し寡少であつても他の諸面の情状次第により結果に於て他の事案に比し重き刑が量定されることのあるのは当然である。

(中西 山田 鈴木良)

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