大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)428号 判決

被告人 村上礼二郎こと村上礼次郎

〔抄 録〕

被告人が本件犯行前友人真田久幸の家で焼酎をコップに一杯飲んでから更に右真田と飲屋に行つてビール一本、焼酎四杯を飲んだから、粟屋ちとせ方に強盗に押し入つたときも右飲酒の影響が相当残つていて、顏が赤くフラフラするような状態であつたことは、当審証人真田久幸、原審証人粟屋愛子の証言によつて認められないわけではない。しかしこの事から直ちに被告人が右強盗の犯行当時心神耗弱の状態にあつたと断定することはできない。被告人の検事や司法警察員に対する供述調書及び原審公判廷における供述を原審証人粟屋愛子の供述と比較対照してみれば、被告人は犯行の動機、手段、方法などについて詳細にとはいえないにしても比較的正確に記憶し、順序正しく述べていることが認められ、酩酊中の行動ではあつても後日これを回想し、その記憶に従つて供述するについてさして支障が存しないこと明らかであり、この事は被告人の犯行当時における行動に飲酒による影響が残つていたにしても、是非善悪の別を弁識し、その弁識によつて行動することが困難な状態にあつたことを否定するものといわなければならない。被告人が被害者の粟屋愛子からマツチを借りて粟屋方外部に出て、その周辺を探したというのは友人から借りた雨傘を犯行現場に遺留しておいてはならないと考えて行動したものであり、被告人がその犯罪の発覚を防止しようとする当然の要求に従つて犯行後直ちに逃走し得なかつただけで、この事あるが故に被告人の行動に通例の犯人として不自然なものがあつたとすることはできない。その他記録上被告人が本件当時心神耗弱の状態にあつたことを認め得ず、原審が右主張を排斥したのは至当であつたといわなければならないから、論旨は理由がない。

(加納 吉田作 山岸)

註 本件破棄は量刑不当。

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