大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)585号 判決

被告人 少年A(在鮮米国軍人)

アメリカ合衆国軍隊においては軍人の身分を取得した時において二十歳に達しない者であつてもこれを成年者として取り扱う定めであつて満二十歳に達しない被告人が同国軍人である関係上同国軍隊において成年者として取扱われること所論のとおりとするも、それは同国軍隊内において言い得ることに過ぎないし、又わが国法例第三条が人の能力はその本国法によつて定めると規定しており被告人は本国法であるアメリカ合衆国法により軍人として当然成年者と同一に取り扱われること所論のとおりであるとしても、法例の右法条は人の能力主として行為能力に関する規定であることが明らかであるから、これにより直接刑事処分に関する取扱まで拘束を受けるものとは考えられない。本件において被告人がわが国の刑事裁判権に服する者であることは日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定第十七条その他の関係法規を参酌し本件訴訟記録を精査検討するときは洵に明らかなところである。そして少年法第二条によれば、同法において少年というのは二十歳に満たないものをいうとあつて何等の留保をしていないのであるから、少年法の適用を受ける者は、その年齡が二十歳未満のものであることをもつて足りその者が他の法規の関係においてその行為能力その他の能力の点において如何様に取り扱われようともそれはすべて全く関係のないことである。従つて少年に対する刑事処分については同法に従うべきものであつて、同法に規定するところが刑法の規定と牴触する場合にはその適用を排除し優先的に適用されるべきものである。従つて、被告人が少年法に所謂少年に該当する二十歳未満の者であることが明らかな以上原判決が原判示犯罪について不定期刑を科した処置はもとより当然であつて所論のように成年者として刑法の規定するところに従つて定期刑を科すべきものではないのである。それ故原判決にはこの点について何等の違法あるをみない。論旨は理由がない。

(裁判長判事 大塚今比古 判事 渡辺辰吉 判事 江碕太郎)

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