大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)710号 判決

被告人 柳本こと文相吾

〔抄 録〕

所論に対する判断に入るに先ち、原判決の認定事実と起訴状記載の事実とがいわゆる公訴事実の同一性を有するものかどうかの点につき考察する。(弁護人岡田実五郎佐々木熙名義の上申書第一参照)

本件起訴にかかる事実は、被告人は氏名不詳者数名と共謀の上第一、昭和三十一年六月二十六日午後十一時二十分より同月二十七日午前六時三十分までの間に東京都中央区日本橋小伝馬町二丁目四番地毛織物卸商株式会社尾山商店において同会社社長尾山三郎管理にかかる霜降ウールインデイアン洋服生地二点外洋服生地類四十一点(価格合計七十七万六千百二十五円相当)を窃取し(昭和三十一年八月四日附起訴状記載の事実)第二、同年六月十九日午前零時頃より午前六時過頃までの間に東京都千代田区神田須田町一丁目五番地株式会社大滝兼蔵商店において同会社所有の黒サージ洋服生地一点外洋服生地三十四点(価格合計百十九万八千八百七十七円相当)を窃取し(昭和三十一年八月二十二日附追起訴状記載の事実)たと云うにあり、これに対し原審は賍物牙保の予備的訴因の追加を許した上、被告人は第一、昭和三十一年六月二十七日金山、康の両名から洋服生地六百六十五米位の売却を依頼され、これが盗品であることの情を知りながら、同日東京都中央区日本橋茅場町一丁目十八番地大山こと鞠海龍方において同人及び松岡こと朴弘薫に対し売却斡旋方を依頼してやり同人等をして坂井末男に対し代金二十七万二千六百五十円で売却させ、第二、同年六月十九日前記金山、康の両名より洋服生地二百米位の売却を依頼され、それが盗品であることの情を知りながら、同月二十日前記鞠海龍方において同人及び朴弘薫に対し売却斡旋方を依頼してやり同人等をして坂井末男に対し代金二十万四百八十円で売却させそれぞれ賍物の牙保をしたとの事実を認定したものである。

しかして原判決認定の各洋服生地は起訴状記載の窃盗被害品の一部で、同一物品であることは本件記録に徴し明らにであるから、起訴状記載の事実と原判決認定の事実とは、株式会社尾山商店又は株式会社大滝兼茂商店の各盗難被害物件について、被告人の関与した所為が窃盗であるか、それとも賍物牙保であるかと云う点に差異があるに過ぎない。そして窃盗と賍物牙保とは、罪質上密接な関係があるばかりでなく、両者の行為がなされた日時の先後、場所の地理的関係も極めて近接しており、一方の犯罪が認められるときは他方の犯罪の成立を認め得ない関係にあるものであるから、このような場合にには両訴因は基本的事実関係を同じうするものと解するを相当とする。従つて原審が本件起訴状記載の窃盗の訴因について、賍物牙保の予備的訴因の追加を認め、右予備的訴因と同一の事実認定をしたことは何ら違法というべきでない。(なおこの点については最高裁判所昭和二七年(あ)第四一五五号昭和二九五月一四日第二小法廷判決参照)

(谷中 坂間 荒川)

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