東京高等裁判所 昭和32年(ツ)11号 判決
「訴訟において、争われる権利又は事実関係成立を決する重要な争点に関し、攻撃防禦の必要上、一方の当事者が、他方の当事者について、名誉を毀損するような主張または供述をしたとしても、その内容が真実であるかぎりは、不法行為としての名誉毀損の成立は否定されるべきことは明らかであるが、それが当該訴訟において遂に真実としての挙証がなかつたからといつて、常に名誉毀損が成立するとはいい得ない。」しかも「一方の当事者が当初から相手方当事者の名誉を害する意図で虚言を用いた場合、そのような意図がなくても著しく相手方当事者の名誉を害する内容の虚言を用いた場合でなければ名誉毀損の成立は阻却されるべきものと解される。」との見地に立つて、原判示の別件損害賠償請求訴訟における被上告人の主張を審究した結果、該主張は上告人の主張するが如く同人の名誉を毀損する不法行為を構成するものでないと断じていることを領することができる。しかして原審の摘示した当事者双方の事実上の主張、提出援用した証拠方法を検討すると、原判示の如く事実の認定をし、且つこれに基く法律上の判断をするのが相当であつて、原判決には所論のような審理不尽、採証法則違背の違法はなく、又理由不備、理由齟齬の違法もない。
(柳川 村松 中村匡)