東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1468号 判決
本件建物は前記の通り控訴人と被控訴人ソノの共有に属するものと認められるのであるから同被控訴人の単独所有名義でなされた本件建物の所有権保存登記は実体上の権利関係に合致しない登記であるというべきである。又本件建物が控訴人と被控訴人ソノの共有物である以上同建物につき抵当権を設定するためには共有者全員の同意を要する筋合であるに拘らず被控訴人ソノが前記の如く被控訴人銀蔵のために本件建物に抵当権を設定するについて他の共有者である控訴人の同意を得たことは被控訴人等の主張立証しないところであるから右抵当権の設定はその効力を生ずるに由なく、従つて被控訴人銀蔵名義の前記抵当権取得の仮登記もまた実体上の権利関係に合致しない登記であるというべきである。しかしながら、被控訴人ソノが被控訴人銀蔵のために右抵当権を設定した当時本件建物につき持分二分の一の共有権を有していたことは前段説明の通りであるから右抵当権の設定は被控訴人ソノの共有持分権を目的とする範囲において効力を生じたもの(この場合他の共有者の同意は必要でない。)と解するのが当事者の意思にも合し相当であるというべく、従つて被控訴人銀蔵は被控訴人ソノの有する二分の一の共有持分権に対し抵当権を取得したものと認むべきである。このように解するときは、本件建物に対する前記保存登記及び仮登記がたとい実体上の権利関係に合致しないものであつてもこれを全面的に抹消することは被控訴人銀蔵が正当に取得した右持分権に対する抵当権を害するおそれがあるから、かかる場合控訴人としては登記更正の手続により、右保存登記を控訴人と被控訴人ソノとの共有名義の登記に、又右仮登記を被控訴人ソノの二分の一の共有持分権に対する抵当権取得の仮登記に、それぞれ更正することを被控訴人等に対し請求することができるけれども、右各登記の抹消登記を求めることは許されないと解するを相当とする。そして右の如き更正登記の請求は実質上控訴人の本訴抹消登記請求中に含まれていると解することができるから、控訴人の被控訴人等に対する各抹消登記請求は右の如き更正登記を求める限度において正当として認容すべきであるがその余の部分は失当として棄却すべきである。
(奥田 岸上 下関)