大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1699号 判決

本件当事者間には、最終的には訴訟でもして解決するの外はない紛争が、本件賃借地の坪数、従つてまたその賃料額において存したものであり、その紛争における控訴人の主張にして、必ずしも無理なものといえないこと右の通りとすれば、控訴人が被控訴人の前記の催告に対し、右控訴人の主張からして正当と考えられる金額である二五、〇〇〇円を被控訴人に現実に提供したことは債務の本旨に従つた履行の提供といわざるを得ないところであつて、これを被控訴人側からいえば、被控訴人としては、紛争は紛争としてこれを留保しともかく右金員はこれを受領し、その受領額中被控訴人の主張額を超える部分はこれを控訴人に返還するか、控訴人がその受領に応じなければ紛争の解決まで一応これを預ることが信義則の命ずるところと考えざるを得ない。

従つて被控訴人は控訴人提供の右金員を受領しなかつたことにつき、その受領遅滞の責を負うべきものと考えられ、控訴人には本件賃貸借上の被控訴人催告の賃料債務について賃貸借解除の理由となるような履行遅滞の責はないものと認むべきであるから、この履行遅滞を前提とする被控訴人の本件賃貸借契約の解除は何等その効力を生じないものというべきである。

(薄根 村木 山下)

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