東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1764号 判決
被控訴人主張の家屋が被控訴人の所有であり、右家屋中被控訴人主張部分を控訴人津久井が被控訴人主張のように賃借し、後賃料の改訂が行われたこと、同控訴人が庭木を伐採し、また道路に面する板塀の一部を除去し、空地の一部に被控訴人主張のような飯食店向屋台を設置したこと、被控訴人主張の日その主張のような契約解除に関する内容証明郵便が二回に亘つて同控訴人に到達したことは、いずれも当事者間に争いがない。
賃借人は賃貸借契約又は賃借物の性質によつて定まつた用法に従つて、その賃借物の使用収益を為すべき義務を負うものであつて、本件賃貸借にあつては、本件家屋は住宅用として建てられ、住宅用として賃貸せられたものであるから、右家屋の附属用地である庭も、住宅の附属用地としてその使用を許され、その附属用地としての用法に従つた使用収益のみが許されているにすぎないものと解すべきである。然るに控訴人津久井は、同控訴人賃借の当時においては、本件家屋附属の庭の大部分は防空壕或いは戦時菜園の用に供せられていたとはいえ、なお相当の樹木が残存し、これが黒板塀越しに見えてなお住宅らしい俤を残していたものであるのに、擅に右樹木を伐採して右家屋附属用地の道路沿い表側の部分に飲食店向屋台を設置し、これを使用して営業するに至つたものであつて、右屋台の設置は住宅たる本件家屋の附属用地の用法に反することは勿論であり、たとえ右屋台の設置が、本件家屋それ自体には何等の手をも加えたものではないにもせよ、またその大きさが僅か一坪三合にすぎないものであるにもせよ、なおまた右屋台が移動式とせられており、土地そのものに定着せられたものでないにもせよ、右設置は、本件賃貸家屋そのものの用法に反した使用に準じて、本件賃貸借の目的物の全体についてその用法に反する使用がせられているものと認むべきであり、しかも右義務違背は本件賃貸借契約の本旨に反するものと認めるのが相当である。
従つて若し同控訴人において被控訴人からする相当期間を定めた復旧催告にも拘らず、なおその不正使用を継続するにおいては、被控訴人はこれを理由として本件賃貸借契約の解除を為し得べきものと解するのが相当であり、従つて前認定の契約解除の意思表示中昭和二九年三月二六日控訴人津久井到達のものによつて本件家屋の賃貸借契約は適法に解除せられたものと認むべきである。
(薄根 村木 山下)