東京高等裁判所 昭和32年(ネ)245号 判決
当裁判所は後記のとおり附加するほか原判決の理由と同一の理由により被控訴人の本訴請求を原判決認容の限度において正当として認容すべきものと判断するから原判決の理由を引用する。
本件において被控訴人がいわゆる抵当不動産の第三取得者といい得るかどうかについては多少疑問がないわけではない。なぜならば被控訴人が所論の判決にもとずいて本件土地について所有権取得登記をしたのは訴外株式会社日本相互銀行のため抵当権実行による競売申立登記の記入があつた後であること当事者間に争なく、右競売申立登記の記入によつて本件土地については差押の効力を生じ、その後の所有権取得は抵当権者に対抗し得ないものというべきであるからである。もつとも成立に争ない乙第一号証の記載によれば被控訴人が実体上本件土地所有権を取得したのは競売申立登記の以前である昭和二十九年八月一日であると認めるべきであるが、その登記のなされたのは右のとおりであるから、結果において変りはない。しかしいわゆる不動産の第三取得者というものはいずれも抵当権実行によつてその権利を失うべき関係にあり、その取得登記は競落のさい職権により抹消されるべきものであるから、その意味においては第三者の権利取得の時期が競売申立登記の前であるか後であるかによつて差異はないのである。従つて民法第三百九十条が第三取得者も競買人となり得ると規定した場合、ここにいう第三取得者のうちに本件被控訴人のように競売申立登記後の取得者を包含せしめることは不合理ではない。そして第三取得者が競買人となり得ることは、たんに自己のすでに取得した所有権その他の権利を確保し得るためではなく、抵当権設定当時の権利の状態において当該不動産について完全な権利を取得することがその利益であるがために外ならない。第三取得者が所有権等を確保するためには別に方法があるのである(代位弁済、代価弁済、滌除等)。第三取得者の競落について法はなんらの制約もしていないのであるから、第三取得者は競落によつて一般の競落人と全く同様の権利を取得するものというべきである。これを要するに控訴人は本件抵当権設定登記後の地上権取得をもつて競落によつて所有権を取得した被控訴人に対抗し得ないのであり、この事態は本件における当事者双方の取得した権利の内容、先後の関係から法律上当然生ずる結果であつて、これをもつて被控訴人における権利の濫用と目すべきものではない。控訴人は抵当権設定後の地上権取得者であるから自らも第三取得者として自己の権利をまもる方法がなかつたわけではなく(代位弁済、代価弁済、滌除、競買申出等)、それをしない以上しよせんは競落によつてその権利を失うべきことは免かれないものというべきである。
(藤江 谷口 浅沼)