大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和32年(ネ)265号 判決

ところで控訴人らは控訴人森川には何ら賃料延滞または無断転貸の事実がないので、被控訴人のなした右契約解除の意思表示は無効である、という。しかしながら、控訴人森川が昭和三十年十一月分以降の約定賃料を現実に支払つていないことは控訴人らの明らかに争わないところであつて、その主張するところは、本件賃貸借における約定賃料は地代家賃統制令所定の統制額を超えるものであり、従前支払つた約定賃料の統制額超過部分を契約解除の意思表示のなされた時まで弁済期の到来した昭和三十年十一月分から昭和三十一年四月分までの延滞賃料に充当するときは何ら延滞がないことになる、というにすぎない。そして何らその計算の基礎を明確にしないのみならず、仮に本件賃貸借について地代家賃統制令の適用があり、その約定賃料が統制額を超えるものであつたとしても、任意に支払つたその超過部分が何ら意思表示を用いず、後の賃料の支払に繰り越されるという法理はなく、また仮にこれを不当利得として本訴において相殺する趣旨であるとしても、これによつて既に適法にされた本件賃貸借解除の意思表示の効力に何ら影響を及ぼすものでもない。

(大江 猪俣 古原)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!