大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)683号 判決

訴外大和工業株式会社と被控訴人千代田化工建設株式会社との間の昭和二九年七月二九日附契約承継証書には、「本件請負工事の注文者なる関東地方建設局から保証人である被控訴会社に対し工事の履行請求があつたため、大和工業株式会社は同会社が注文者に対し現在及び将来において有する一切の債権を被控訴会社に譲渡する、大和工業株式会社が既に工事現場に搬入した工事用資材及び既済工事並びに発注済機器に対する前渡金に関する債権は一切被控訴会社においてこれを無償で譲り受ける、大和工業株式会社は注文者が請負契約残工事の既済工事に対する割合により請負代金総額を按分した金額と注文者より被控訴会社が支払を受ける金額との差額を被控訴会社の大和工業株式会社に対する償還請求債権とし、大和工業株式会社は別途被控訴会社と協定するところにより被控訴会社に支払う」との趣旨が記載されているが、この事実と本件工事請負契約及び保証契約の全内容とを綜合すれば、同契約における注文者から保証人に対し工事を完成すべきことの請求があつたとき保証人が請負契約に基く権利及び義務を承継するものとするとの定は、右請求があつたとき保証人が注文者に対する関係においてはこれと同時に当然に前請負人に代つて請負人の地位に立ち、自ら残工事を完成すべき義務を負担するに至ると共に、右地位の承継の結果前請負人と保証人との間においては当事者互に相手方に対し、注文者に対する請負人の契約上の権利義務を前請負人から保証人に移転させるべき義務を負担させる趣旨に外ならないものと解せられ、被控訴会社が主張するように、大和工業株式会社と被控訴会社との間において前記工事履行請求により請求契約上の権利義務が何らの意思表示にもよらないで当然に前者から後者に移転する趣旨まで定めたものとは解することができない。而し証拠によれば、前記昭和二九年七月二九日に大和工業株式会社が注文者に対し現在及び将来において有する一切の請負契約による債権を被控訴会社に譲渡する旨の契約が大和工業株式会社と被控訴会社との間に行われたことが明らかである。

しかしながら、被控訴会社は前認定のとおり、右譲渡契約により注文者に対する請負契約上の債権を譲り受けると共に、その対価たる請負契約上の注文者に対する債務をも承継したものであるから、特段の事情の認められない本件では、右債権の譲渡によつては大和工業株式会社の財産に格別の増減を来し、その債務の弁済力に何らかの影響を及ぼしたものとは認め難く、従つてこれを以つて大和工業株式会社に対する債権者を詐害するものと認めることはできない。

してみると、右債権譲渡が控訴人に対する詐害行為であることを前提とする控訴人の請求は理由がないとして本件控訴を棄却した。

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