東京高等裁判所 昭和32年(ラ)297号 決定
抗告人は東京地方裁判所昭和二六年(ワ)第七、五一六号売掛代金請求訴訟において、被告大阪水産煉製品商工業協同組合(以下被告(一)と略称する)にたいし販売したデンプンの売買代金を被告(一)に請求すると同時に、被告(一)がみぎデンプンを相手方らに転売した売買代金を債権者代位権にもとずいて被告(一)に代位して相手方らにその支払を請求するものである、されば第一、抗告人の被告(一)にたいする債権も被告(一)の相手方らにたいする債権も、いずれも売掛代金債権であつて同種の債権である、しかも、第二、これら債権の発生原因は前述のとおりで、結局同一物品が抗告人・被告(一)・相手方ら間に転売せられた売掛代金債権であるから、あきらかにその内容において、また、その発生原因において関連ありというべきである。主観的共同訴訟について民事訴訟法第二十一条の適用を制限的に解釈する原審の立場に立つても、なお本件にその適用を肯定すべきものである。したがつて、抗告人の被告(一)にたいする請求について東京地方裁判所に土地の管轄権がある以上、民事訴訟法第二十一条により抗告人の相手方にたいする請求についても、また同裁判所の管轄権をみとめるべきであるのに、同条の適用なしとの前提の下に本件について東京地方裁判所に管轄権なしと判断した原審の移送決定はとりけしをまぬがれない、というにある。
しかしながら、第一、民事訴訟法第二十一条がいわゆる主観的共同訴訟に適用せられる場合は、これら訴訟の訴訟物相互間に法律上、または事実上なんらかのけんれん関係がある場合にかぎるのであつて、たんに訴訟の目的たる債務が同種で、事実上、法律上同種の原因にもとずくにすぎない場合はその適用がないものと解すべきであるから、かりに抗告人主張のとおり抗告人の債権と、被告(一)の相手方らにたいする債権とがいずれも売掛代金債権であつて、民事訴訟法第五十九条後段にいわゆる同種の債権であつても、同法第二十一条の適用のないことはあきらかといわねばならない。つぎに、第二、抗告人は、抗告人が被告(一)に売りわたしたのと同一デンプンが、被告(一)によつて相手方らに転売せられたという事実関係をよりどころとして、これら取引相互間のけんれん性を主張するけれども、デンプン等代替物を目的とする売買は、土地建物等不動産を目的とする売買とことなり、特段の事情のないかぎり、不特定物の売買と解せられるから、たまたまその履行として給付されたものが同一物であつた場合にも、これら売買の相互間になんらのけんれん性をみとめないのを相当とする。されば、かりに事実関係が抗告人主張のとおりであつたとしても、各売買の履行としてひきわたされたデンプンがたまたま同一であるというにとどまり、これをもつて民事訴訟法第二十一条の適用の有無を定めるについての訴訟物である法律関係について事実上のけんれん関係があるとみとめることはできない。
(藤江 谷口 満田)