大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ラ)337号 決定

(証拠)を綜合すれば、前記金銭消費貸借契約公正証書による貸借契約は、疏甲第二、三号の各無尽返掛金の元利金債務を一口に取纏めて消費貸借契約に引き直したものであることが窺われる。抗告人は右消費貸借契約の締結は即ち更改であつて、これにより本件根抵当権を以て担保される無尽返掛金債務は消滅したものであると主張するけれども右無尽掛金弁済契約と消費貸借契約とは、その要素である当事者(債権者及び主債務者)並に債務の目的につき何等の変更あるものでないから、これを以て直ちに債務の同一性を失わしめる更改であると即断することはできない。一般に既存債務を目的として消費貸借契約を締結した場合、当事者の意思は必ずしも旧債務を消滅させて新債務を発生せしめんとするにあるとは限らず、殊に旧債務に担保権が存するようなときは、寧ろ債務の同一性はこれを維持しつつ、単に消費貸借の規定に従うことを合意するに止るものと見るべきであるから、旧債務について設定された担保権は当然に後の消費貸借債務に及ぶものというべきである。本件においても銀行業者たる相手方が根抵当権の設定ある無尽返掛金債権をわざわざ消滅させて単なる消費貸借債権に代えるために準消費貸借契約を締結したものとは到底解し得られないので、右消費貸借契約の成立に伴い本件根抵当権が被担保債権と共に消滅したことを前提とする抗告人の主張は是認できない。

(薄根 奥野 山下)

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