東京高等裁判所 昭和32年(ラ)351号 決定
記録によれば原告小沢が訴状に添付した書類中には甲第四号証として約束手形の写一通があり、右手形は支払地支払場所とも山形市内とするものであることが明らかであるが、原告が訴状において主張する請求原因は原告は昭和三十年十月二十五日被告に対し金二十万円を利息を定めず弁済期を同年十一月二十五日として貸与したというにあつて、右貸金の履行を求めるものであつて、右手形上の請求ではないことが明らかである。そして原告が右貸金を本訴請求原因としながら右手形の写を訴状に添付して提出しているところをみると、右手形は右貸金と全く無関係のものではなく、なんらかの意味において関連するものと解すべきであるが、その手形振出の事情については記録上これを決定し得べきものがないから、結局右手形は右貸金の支払を確保するために振り出されたものと推定するのが相当である。そうだとすれば原告は被告に対しては本来の貸金の請求をしてもよく、手形上の請求をしてもよいのであり、本来債務の支払確保のため手形が振り出されたというだけで、本来の債務の履行地を手形における支払地又は支払場所とする旨の合意があつたものとすることはできない。右のほか本来の貸金債務につき履行地の定めがあつたことはこれを認めるべきものがない以上、本件の義務履行地は債権者の現時の住所である東京都内にあるものとするのは当然である。
(藤江 谷口 浅沼)