東京高等裁判所 昭和32年(ラ)594号 決定
抗告人は「本件差押物件は相手方が抵当権を有する建物に備付けられている機械で工場抵当法第七条第二項の規定により建物とともにするのでなければ差押の目的とすることができないのであるから、抗告人が右機械だけにつき動産の強制執行としてなした本件差押は無効であり、相手方はその無効であることを主張すれば足りたのであつて第三者異議の訴を起すには及ばなかつたのであるから、右訴訟は権利の伸長又は防禦に必要なものとはいえない。」と主張する。
工場抵当法第二条の規定によれば、工場に属する建物の上に設定した抵当権はその建物に備付けた機械器具その他工場の用に供する物に及ぶものとされており、これらの物は建物とともにするのでなければ差押の目的とすることができないことは同法第七条第二項の規定により明らかであるから、相手方がかような物件だけについて動産の強制執行として差押をしたことは違法であること抗告人主張のとおりである。そうして右のような違法な強制執行がなされたときは、工場建物の抵当権者は民事訴訟法第五百四十四条の規定による異議の申立をなすことができる。しかしながら抵当権の及ぶ動産につきかような違法な差押を前提として競売手続が進行するときは、抵当権者は物件が競落され建物より分離して第三者の手に帰することによりその物に対する抵当権を喪失する虞があるから、これを阻止するためには、同法第五百四十九条にいわゆる強制執行の目的物の譲渡もしくは引渡を妨げる権利を有するものと解するのが相当である。従つて抵当権者は同条所定の異議の訴をも提起することができる。この異議の訴は、同法第五百四十四条の異議とは性質及び効力を異にするものであるから、後者の異議が許されるからという理由で前者の異議の訴が許されないことにはならず、又これを不必要ということもできない。よつて相手方の提起した本件異議の訴を権利の伸長又は防禦に不必要なものであるという抗告理由は採用できない。
(川喜多 小沢 位野木)