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東京高等裁判所 昭和32年(行ナ)3号 判決 1958年2月27日

原告 西岡喜代吉 外一名

被告 特許庁長官

主文

昭和二十九年抗告審判第一、九八六号事件について、特許庁が昭和三十一年十二月十日にした審決を取り消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

第一請求の趣旨

原告等は、主文同旨の判決を求めると申し立てた。

第二請求の原因

原告等は、請求の原因として、次のように述べた。

一、原告等は、特許第二〇〇七三三号「蒟蒻粉製造法」の特許権を共有するものであるが、昭和二十八年十二月三十日右特許発明の改良にかかる新規の発明「蒟蒻粉の製造法」について、追加の特許を受けるため出願した(昭和二十八年特許願第二四、四五九号事件)。しかるに特許庁は、右出願について、昭和二十九年九月二十二日拒絶査定をしたので、原告等は、同年十月十三日抗告審判を請求したが(昭和二十九年抗告審判第一、九八六号事件)、特許庁は昭和三十一年十二月十日原告等の抗告審判の請求は成り立たない旨の審決をなし、その謄本は、同月二十一日原告等に送達された。

二、原告等の出願にかかる右発明の要旨は、「水洗により清浄したる蒟蒻玉を、水分を用いず、わさびロールにて軽く摺り卸し、真空中において加熱乾燥を行いつつ攪拌揉捻し、乾燥せる粉末状態に至らしめることを特徴とする蒟蒻粉の製造法」であるが、審決は「蒟蒻芋を摺り卸した後乾燥することは、周知のことであるのみならず(昭和八年七月三日発行特許第一〇一四二五号明細書参照)、真空低温乾燥は、常圧における乾燥により変色し易い資料の乾燥にしばしば応用されている方法であるから、本願の方法はこれら周知事実から、当業者が容易に到達し得ることと認められる。」ものとし、原告等の出願にかかる発明は、特許法第一条にいう発明と認め得ないといつている。

三、しかしながら、審決は、次の理由により違法であつて、取り消されるべきものである。

(一)、前記原特許権の登録は昭和二十八年十月十五日になされたもので、原告等は、右特許発明に改良拡張を加え、試験の結果得た特徴を収めて、本件追加特許の出願をした。そしてこの出願は、特許法第五条に規定してある特許権の発生の日から六ケ月以内に出願の手続を完了しているものであるから適法である。しかるに特許庁の査定及び抗告審判においては、特許法第二条、第五条を無視し、一事不再理の原則を破り、特許法第一条により審理したことは不当である。

追加特許の出願は、特許法第二条の審理を受けるものであつて、特許法第一条で審理すべきものではない。特許庁がこれを勝手に独立の特許願として審理しても、追加特許の出願については、無用の審決である。

(二)、原告等の有する前記原特許第二〇〇七三三号「蒟蒻粉製造法」の要旨は、「蒟蒻玉の芽を除去し、水洗いして清浄し、煮熱又は蒸熱したる後、外皮を剥ぎ破砕したる後、直ちに容器内に収容し、攪拌揉捻しつつ加熱し、乾燥せる粉末状態に至らしむることを特徴とする蒟蒻粉の製造法」であつて、その目的とするところは、煮熱又は蒸熱によつて、蒟蒻玉に含まれた色素の活躍を抑制し、酸化酵素の作用によつて着色すことを防止し、通常の乾燥器を用い、加熱乾燥に際し、人工を加え蒟蒻玉に共含している水分と色素を同時に蒸発乾燥を完了するにあつた。

原告等は、右原特許発明の要部を改良し、煮熱と蒸熱を取り止め、真空処理によつて蒟蒻玉に共含している色素の活躍を阻止し、酸化酵素の作用による着色を完全に防止することを得た。すなわち普通乾燥器を真空乾燥機に改め、真空処理を施すにあたり、加熱攪拌揉捻に人工を用いることなく、すべて機械の操作によつて遂行し、合理的方法により、共含している色素と水分を、蒟蒻粒子と分離して同時に蒸発水蒸気と化せしめ、喞筒の吸収圏外排泄を完了し、能率の向上、工業的大生産の実を挙げしめたものである。

しかるに審決が拒絶の理由として摘示している特許第一〇一四二五号蒟蒻粒子製造法は、半乾燥或は不完全乾燥により、最後に完全乾燥を遂げるものであり、絶対的必須の条件たる飛粉又は色素を除去することを記載していない。

又本件出願の方法は、前述したように、真空乾燥の方法により蒟蒻粉のうちに共含している水分と色素を同時に除去することを骨子とし、これを真空中に処理することであつて、真空機の発明ではない。従つて公知の真空機を用いることは、何の差障りもない。

更に真空乾燥の方法は従来もつぱら乾燥のために使用されたが、本件の方法のように、色素除去のために使われたことはない。従つて本件出願の方法が、審決のいうように、周知の事実から容易に推考し得るものではない。

第三被告の答弁

被告指定代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、原告主張の請求原因に対して、次のように答えた。

一、原告主張の請求原因一及び二の事実は、これを認める。

二、同三の主張を否認する。ただし原特許の要旨が、原告主張のようなものであることは認める。

(一)、審決が、その文章において、特許法第二条に触れなかつたために、原告は審決があたかも第二条の規定を全く考慮しなかつたものの如く感じたのであろう。しかしながら、特許法第二条による追加特許願の審理にあたつては、それが特許発明としての要件を具備するや否やを審理する必要があるもので、それにはもつぱら、第一条の規定によつて判断しなければならない。第二条に「独立の特許に代へ」との限定があることからしても、独立特許願としての要件を具備しているかどうかを、先ず審理することが必要であることが明らかである。従つてこの根本問題において特許不適格なものは、第二条による出願であるからといつて、特許することはできない。この意味で審決を一読すれば、たとい第二条について説明していなくても、同条文の母体である第一条について説明してあるから、直ちに「従つて第二条にも該当しない。」との結論が出る筈であつて、この説明が足りなかつたとて、第二条よる審理を全くしなかつたわけではない。と同時に、第一条によつて発明の有無を審理したことが不当だということもできない。

次に特許法第五条に関しては、本件特許出願が特許法第五条によつて出願されたものであることが明らかにされていない以上、該条文に触れることは、不必要なことである。また審決には、一事不再理の原則に反するところはない。

(二)、常圧乾燥により変色し易い資料を乾燥するために、減圧下に低温で短時間で乾燥することは、乾燥野菜や乳製品の製造に屡々用いられるところである。また本件出願の方法は、飛粉の生成を防止しようとするものであるが、従来の方法で飛粉が生成されるのは、その搗砕操作に基因するものであつて、搗砕を行わない引例の方法では、本件出願の方法とひとしく飛粉が生じないものである。そしていわゆるスタンブミルの使用で飛粉が生ずるのは当然であるとともに、摺卸したものを減圧乾燥する本件出願の方法が飛粉を生じないことも、また当然の作用効果として予期し得るところである。本件出願の方法が着色せず、飛粉が生じないからとて、特許法第一条従つて第二条の発明を構成するものでないことは、採用された手段が不安定なものの乾燥にあたつて採用すべき化学操作として周知であり、これを採用することが、すこぶる当然かつ容易であると認められるからである。

(三)、原告は、出願、審判、出訴の全過程において、引例には飛粉の除去について記載されていないと主張するが、審査官のなした拒絶理由通知書にも、「蒟蒻芋を擂潰し乾燥粉末とする蒟蒻粉の製造方法は例示するまでもなく周知であつて」と記載されており、右方法によれば飛粉がでる筈はない。飛粉とは、マンナン粒子以外の細胞の破片や澱粉粒子(蒟蒻芋は、マンナン細胞のほかに、沢山の管束組織細胞、赤色のタンニン細胞を含む。)が、アオリヤや扇風機で飛ばされてできたものである。細胞の破片や澱粉粒子は、真空でも蒸発するものでないから、原告が「真空乾燥の方法により、芋中に蓄積された水分と飛粉と化する素因物を同時に除去する」といつているのは誤りである。更に「引用の特許明細書には、飛粉の除去についての記載がないから、飛粉の除去には成功していない。」との主張も同様に誤りである。飛粉成分は、摺卸し後において、引用明細書記載の方法のように加熱乾燥しても、特に本件出願の方法のように、真空下に加熱乾燥しても、除去することはできないものである(乙第二号証の一、二参照)。

(四)、原告は、本件出願の方法によれば色素をも除去するが、前記引用明細書には、この記載がないと主張する。

しかしながら引用明細書記載の方法によつても、本件出願の方法と同程度のものが得られ、そのことは実施例の記載からも容易に認められる。特にその例一では加熱しているから、芋中の酸化酵素は熱により不活性化され、同時に通風により急速に乾燥しているから上りがよい。そして色素が、水分や飛粉とともに揮発するものでないことは、いうまでもないことであり、本件出願の方法における着色防止の役目の一半は、加熱による酸化酵素の不活性化処理が果しているものであるから、本件出願の方法が、引用特許明細書記載の方法に近いことは、益々明らかである。

このようにみて来ると、引用特許明細書記載の方法と本件出願の方法と差異は、真空を採用するか否かの点である。ところが加熱のみならず、真空をも併用して、発色し易い食品、特に野菜、果実の黒変、褐変を防止することは、すでに二十数年前に応用されているところである(乙第三号証参照)。なお一般の処理では、変質着色し易い種々の食品を真空乾燥することは周知であつて、ロバート・エリンのミルク真空乾燥器や、大野化学機械の食品用攪拌式真空乾燥器が提供され、また食品保蔵学では、食品の真空乾燥法について研究し尽され、該方法は成分の変化が少ない代りに、必要性が極限されると説いているほどである。

(五)、以上の論述で明らかなように、本件出願の方法は、周知の食品処理手段から容易に到達し得るものであるが、更にその進歩性について一言するに、本件出願の方法が、発明を構成するためには、従来の方法から容易に到達し得るものでないことと、何らかの長所がなければならない。長所として原告が主張するものに収得量の増加、製品の品質優秀等がある。しかしながら、水分以外のものは全部粉になるから、マンナンの含有率を度外視すれば、粉の収得量が増大するのは当然であつて、この点本件出願の方法も引用明細書記載の方法も異ならない。また品質の優秀性からいえば、本件出願の方法による製品は、従来の方法による精粉に比して、飛粉混含の点において劣ることは明らかである。従つて本件の方法は、何等発明に値するものでない。

第四証拠<省略>

理由

一、原告主張の請求原因一及び二の事実並びに同三の事実のうち、原告等の有する原特許第二〇〇七三三号発明の要旨が、原告主張のとおりであることは、当事者間に争いのないところである。

二、右当事者間に争いのない事実と、その成立に争いのない甲第一号証(本件追加特許願)によれば、原告等の出願にかかる本件発明の要旨は、「水洗により清浄にした蒟蒻玉を、煮熱、蒸熱等を施さず生玉のまま、水分を用いず、ワサビロールで軽く摺り卸し、真空中で加熱乾燥を行いつつ、攪拌揉捻し、乾燥した粉末状態に至らしめることを特徴とする蒟蒻粉の製造方法」であり、右明細書における発明の詳細なる説明の項には、「同発明において、生蒟蒻玉に加熱を施さないことは、真空中において適当な熱度を加え、攪拌揉捻作業中に、酸化酵素を破壊し、全く着色することなく、蒟蒻の黒変化を防ぎ、かつ次の工程における破砕粉末化を容易にするために非常に有利であり、粘着力を増大し、次に蒟蒻玉を破砕するは、組織を崩壊せしめ、水分の逸散と攪拌揉捻に便せしめるためである」こと及び「従来の製造は蒟蒻玉四百貫目を切り干し、加工により水分を除去し、荒粉七十五貫を作り、後これを粉砕し、三十貫の飛粉を放棄し、四十五貫の製粉を収得したが、本件の方法によるときは、蒟蒻玉四百貫より、水分八〇%を除去し、二〇%の製粉を収得することができ、その製品は無色、良質である。」旨が記載され、その目的は、変色、着色を防止しつつ、一挙に品質のよい蒟蒻粉を、歩止りよく製造せんとするものであることが認められる。

次にその成立に争いのない乙第一号証(甲第三号証に同じ)によれば、審決が引用した特許第一〇一四二五号明細書には、「蒟蒻芋を摺卸しその他の手段によつて、個々の構成粒子に崩壊分散せしめた後、半乾燥又は不完全乾燥を行い得られる粗密な粒子凝集塊を潰砕し、最後に完全乾燥を行う蒟蒻粒子製造法」が記載され、その詳細な説明の項には、「従来蒟蒻粉を製造するには、水造した蒟蒻芋を輪切とし、数日間天日乾燥し、全く乾固せしめたる後(この乾固物を「荒粉」と称する。)、これを搗砕し、強いて壊砕し、各粒子の表面に固着した種々の不純夾雑物を除去するため、これを研磨しつつ風を送り、夾雑物をいわゆる「飛粉」として除去し、更に撰別等に付したものであるから、粒子間に混在する蛋白様物質その他の夾雑物は乾燥に際し、粒子と粒子とを堅固に凝着結固せしめ、堅硬な乾塊となり、従つて搗砕に容易でないばかりでなく、執拗に固着せる不純物を除去しようとして、遂に蒟蒻粒子その物をも破潰するを免れず、蒟蒻粒子の粉砕せられて飛粉に入り、逸散損失する量著しく、歩止り少なきとともに製品の質また不良であつたのが、本発明の方法によるときは、潰砕工程に入る前既に相当量の個々に分散した粒子を得られるばかりでなく、潰砕工程を経させる凝集塊は、粒子と粒子とが軽く接触せる程度の粗密なものであるから、軽微の機械力によつて簡単に個々の粒子を分散せしめ、粒子自から粉砕せられて飛粉に入り損失すること殆んどなく、収得量が著しく増加するばかりでなく、不純夾雑物の除去甚だ容易で精良なるものを容易に得べき利点があり、」その目的とするところは「簡易な操作工程により収得量を著しく増加するとともに、極めて精良なる品位のものを容易に得ようとするものである。」ことが記載されていることが認められる。

三、よつて以上認定するところにより、本件発明の要旨と引用特許明細書に記載されたところとを比較するに、両者はともに蒟蒻玉(蒟蒻芋)を摺り卸し、これを加熱乾燥して、蒟蒻粉(蒟蒻粒子)を製造するという概念的な点において、一致する。しかしながらその採用する方法について、前者は摺り卸したものを、真空中で加熱乾燥しつつ同時に攪拌揉捻して乾燥粉末を製造するのに対し、後者は摺り卸した蒟蒻玉を先ず加熱並びに風力によつて速かに半乾燥して粗密な凝集塊となし、次にこの凝集塊を潰砕し最後に完全乾燥を行うものである点において相違する。

これらの両方法によつて生ずる効果について、本件出願発明明細書における詳細なる説明の項には、「真空中において適当な熱度を加え、攪拌揉捻作業中に、酸化酵素を破壊し、全く着色することなく、蒟蒻の黒変化を防ぎかつ次の工程における破砕粉末化を容易にする」ことが記載されているのに対し、引用特許の明細書には、単に「潰砕工程に入る前に相当量の分散粒子を得るばかりでなく、潰砕工程を経させる凝集塊は、軽微の機械力によつて簡単に個個の粒子を分散せしめ、粒子自ら粉砕せられ飛粉に入り損失することが殆んどなく、収益量増加し、かつ不純夾雑物の除去が容易で精良なものを得る」ことが記載されているだけで、前者にみるような製造過程における変色、着色の防止については全然言及されていない。そしてこの点について原告椿本鉄蔵本人尋問の結果並びにこれによつてそれぞれ引用特許明細書記載の方法及び本件出願の方法によつて得られたものであることを認められる検甲第二号及び第三号を総合して考察すると、本件出願の方法により製品は、僅かに黄味を帯びた白色の粉末であるのに対し、引用特許明細書記載の方法による製品は、黒褐色を帯びた灰白色の小粒塊であることが認められ、右認定は、乙第一号証及び第二号証によつては覆えすに足りず、被告はこの点について他に何等の反証をも提出しない。

してみれば本件出願の方法は、前記明細書に記載されたような、引用特許明細書記載の方法には全く認められない顕著な効果を有するものと認定せられる。

四、被告代理人は、右認定の採用方法及びその効果の相違点について、常圧乾燥により変色し易い資料を乾燥するために、減圧下に低温で短時間に乾燥することは、乾燥野菜や、乳製品の製造に屡々用いられるところであると主張し、その証拠として、特許第一〇〇二二一号「純白色粉末トロロ製造法」の明細書(乙第三号証)を提出しているが、審決は「(前略)真空低温乾燥は常圧における乾燥により変色し易い資料の乾燥にしばしば応用される方法であるから、本願の方法は、これら周知事実(特許第一〇一四二五号明細書に記載するところをいう。)から当業者が容易に到達し得ることと認められる。」と説示するだけで、審査、審判の両手続を通じ、前記乙第三号証はもとより、出願人が極力従来の方法とは相違するものと主張する点について、これが新規なものでないことを例証する資料が出願人に示され、かつ、出願人をしてこれについての意見を述べる機会を与えた事実を認めるに足りる証拠は全然ない。

食料品工業等において、真空乾燥がしばしば行われ、殊に加熱によつて破壊され、或いは変色、変質する物の乾燥に、真空低温乾燥が適していることは、審決のいうとおりであろうが、乳酪品製造等の近代的で普通大規模の経営による産業と異り、蒟蒻粉の製造のような原始的で、多分に家内工業的な規模において行われるにすぎないものにあつては、これらの事実も、必ずしもいわゆる当業者が当然に知るところとは解し難く、これが例証を示して初めて出願人をして、拒絶の理由とするところを知り、かつこれら例証の刊行物に記載するところと、出願にかかる発明の相異について、出願人をして、その意見を述べしめ、また事案によつては、これに応じ明細書又は図面を訂正すべき機会を与えなければならない。

しかのみならず、本件発明の要旨とするところは、先に認定したように、単に真空下に加熱乾燥するだけではなく、それと同時に攪拌揉捻を行い、凝塊化を防ぎ一挙に乾燥蒟蒻粉を製造する方法であり、この点については、審決は何等の説明をも与えていない。

してみれば、審決が、特許第一〇一四二五号明細書のみを引用し、「本件の方法は、これら周知事実から当業者が容易に到達し得ることと認められ、特許法第一条にいう発明と認め得ない。」としたのは、違法であるといわなければならない。

五、原告は、なお審決の違法な理由として、特許法第二条及び第五条の適用について主張しているが、すでに審決が前述のところにより違法であると判定した以上、進んでこの点について論ずる必要がない。

また被告代理人は、本件出願にかかる発明が進歩性を有しないものであると主張するが、この点は審決において全然論及されないところであるから、これを以て審決の当否を論ずる資料とすることはできない。

以上の理由により、原告の本訴請求を理由ありと認めてこれを認容し、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 内田護文 原増司 谷口茂栄)

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