大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(う)1063号 判決

被告人 杉田筆三郎

〔抄 録〕

被告人は原判示協同組合の副組合長の任務に背き、予て取引のある三星飼料東京支店販売係須川栄又は同支店長山形文男より資金操作のため融通手形を貸してくれと依頼され、組合に対し暗に財産上の損害を加えるかも知れないことを知りながら、三星飼料の利益を図る目的を以て無担保で原判示各約束手形を振出し、原判示第一の約束手形は右須川栄に交付し、原判示第二の約束手形はいずれも山田某を通じ三星飼料常務取締役鈴木勝弥に交付し、三星飼料はその後右各手形を他に裏書譲渡したため、組合は各手形所持人より手形金の請求を受くるに至つたもので、組合に対しいずれも右手形金相当額の債務を負担させ以てこれと同額の損害を加えた事実を認めることができる。論旨は本件手形は最終的には三星飼料の手により決済されており、組合は何等財産的出損をしていないから組合(本人)に財産上の損害を加えていないと主張するが、背任罪において本人に財産上の損害を加えたとは、本人に財産的な出損をさせて実害を加えた場合ばかりでなく、財産的な実害発生の危険を生ぜしめた場合をも包含するものと解すべきところ、記録によれば被告人は前記の如く三星飼料の依頼によりその任務に背き何等対価を得ることなく且つ無担保で約束手形を振出し交付し、受取人たる三星飼料はこれを他に裏書譲渡したため組合は振出人として所持人より手形金の請求を受くるに至つたのであるから、被告人は右手形の振出により、組合に対し手形上の債務を負担させ、財産的な実害発生の危険を与えたものといわなければならない。

(大塚 本田 渡辺辰)

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