東京高等裁判所 昭和33年(う)1188号 判決
被告人 宮崎芳作
〔抄 録〕
論旨は、原判決は本件被告人の賃金不払による労働基準法違反の行為を賃金の支払を受くべき労働者の員数に不払回数を乗じた数の違反があるものとしているけれども、会社の賃金支払の義務は会社と労働組合との間の一個の労働協約に基くものであるから個々の労働者の員数を違反行為の数の決定の基礎とするのは法律の解釈を誤つたものである、というのであるが、賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないことは労働基準法第二十四条の定めるところであつて、ただ労働協約等に別段の定めがある場合においては賃金を通貨以外のもので支払い、若しくは賃金の一部を控除して支払うことができるのに過ぎないのであるから、賃金不払による労働基準法違反の行為は各労働者ごとに、かつ賃金を支払うべき期日ごとに、一個の犯罪が成立するものというべく、したがつて、この点に関する原審の法律解釈には何らの誤りも存しないものといわなければならない。ひつきよう、所論は採用し難く、論旨は理由がない。
(坂井 山本長 荒川)